Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

パナソニック、食品流通事業にもAI活用

2月6日、パナソニックは、パナソニック産機システムズの本社が入る東京スカイツリーイーストタワーで、ノンフロン冷凍機や遠隔ソリューションに関する技術セミナーを開催しました。

「パナソニック産機システムズ」は、パナソニックの4つの社内カンパニーの一つ、アプライアンス社傘下の企業で、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどのショーケースや業務用空調機器、冷凍機、LED照明器具などの食品流通事業において、機器の販売や施工などを行っています。


※パナソニックの「ノンフロン冷凍機」

この日紹介されたのは、「ノンフロン冷凍機」と、遠隔データサービス「S-cubo(エスクーボ)」の2つのソリューションです。

1つ目の「ノンフロン冷凍機」は、スーパーマーケットなどのショーケースの冷媒に、環境負荷の高いフロンや代替フロンではなく、CO2を使う冷凍機です。代替フロンは、モントリオール議定書の改正によって、先進国は11年~13年基準で、19年までに10%、36年までに85%減らさないといけない。そのなかで、パナソニックは10年からCO2を使った冷凍機を発売しています。自動車の燃費規制と同じく、規制先導型で置き換えが進みつつあるんですね。

今回、紹介された「ノンフロン冷凍機」は、基本的に、冷凍機2台と熱交換装置の組み合わせで構成されます。1台の冷凍機で冷媒を高圧冷却し、もう1台の冷凍機で熱交換装置そのものの熱を取る。1台目の冷凍機の冷媒が、熱交換装置を通ってさらに冷やされてショーケースに搬送されるため、冷却効果が増し、消費電力を抑えることができる。17年には、欧州や中国に出荷を始めています。さらに、今春発売される30馬力の「ノンフロン冷凍機」を使用すれば、従来比約2割の施工費用削減と10~15%程度の省エネが見込めるといいます。

2つ目の遠隔データサービス「エスクーボ」は、施設の電力使用量グラフやエネルギー報告書を確認できる「EREMOS(エレモス)」、機器の温度などに異常がないかどうかを図面で監視したり、ショーケース温度の日報や警報を受け取ったりすることができる「プロメンテナンスツール」、店舗の設備資産をパソコンで登録できる「設備台帳システム」などのサービスです。

この日、「エスクーボ」を導入した15000の施設を遠隔監視するセンターの見学案内が行われました。専門スタッフが常時監視することで、機器の温度やエネルギー使用量などの異常検知を受けて現場に駆けつけたり、故障予知をしたりするなどして、店舗運営の悩みを解決します。


※東京スカイツリーイーストタワー内にある遠隔監視センター

昨年4月からは、「エスクーボ」で得たビッグデータをもとに、AIやIoTを使って施設の新規出店から運営、閉店までのトータルサイクルを支援する「エスクーボシーズ」を開始しました。設備の導入、運用、保守までを、月額制のサービスとして一括で提供するんですね。ユーザーは、初期投資コストを抑えられます。

今後は、「エスクーボシーズ」のサービスをさらに進化、拡充する。昨年10月、パナソニックは、米国のAIベンチャーでデータ解析を得意とするアリモを買収しました。アリモの技術を使って、省エネ設定の完全自動化や、設備機器の故障予知や診断、店舗の統合エネルギー管理などを行う計画です。

パナソニックの家電や産業機器は、いまだ、それ自体が大きな収益源として業績を下支えしています。しかし、これまで通りの製品売り切りのビジネスモデルのままでは、もはや成長戦略を描けない。ビッグデータやAI、IoTの時代のなかで、どのようなビジネスモデルを構築するかが課題です。そのなかで、「エスクーボシーズ」は、試金石の一つといえるでしょう。

ページトップへ