昨日も触れた通り、パナソニックは創業100周年を迎えました。3月1日、「家電ビジョン説明会」として、次の100年に向け、家電事業の方針説明会を行いました。
※パナソニックアプライアンス社社長の本間哲朗さん
家電を扱う社内カンパニーのAP(アプライアンス)社社長本間哲朗さんは、発表会の席上、次のように話しました。
「家電は、いつの時代にも人々の新しい暮らしのあこがれを届けるものでなければならないと考えています。アプライアンス社は何をつくっているのですかと聞かれたら、私は『あこがれをつくっているところです』と、答えたい。家電事業を通じて、これからの暮らしのあこがれをつくり出し、世界の人々に届けていくこと。それが私たちの変わることのない未来に向けた仕事だと信じています」
パナソニック社長の津賀一宏さんは、2012年に社長に就任後、パナソニックの事業の方向性を、家電を中心とするB2Cから、車載やソリューションを中心とするB2Bに大きく変化させました。結果、最近のパナソニックの話題といえば、車載電池とか、自動車用の次世代コックピットといったB2B関連が多く、家電はやや下火に思われがちです。
しかし、本当にそうでしょうか。
2017年度の通期見通しについて、社内カンパニー4社の売上高を比較すると、AP社は2兆5700億円と4社中2位。営業利益を見ると、1060億円と4社のなかではトップです。依然、家電はパナソニックの大黒柱なのです。
振り返れば、パナソニックは1918年の創業以来、日本経済と軌を一にして成長を遂げてきました。「家電事業は、パナソニックの100年という歴史のなかで、つねに事業の中心にありました」と、本間さんはいいます。電球や電気こたつ、さらに「テレビ、冷蔵庫、洗濯機」の“三種の神器”など生活家電を大量に生産販売し、主婦を家事から解放すると同時に、人々の暮らしを豊かにしてきました。
私は、ソニー製品のキーワードを「夢」とするならば、パナソニックのそれは「生活=ライフスタイル」だと思っています。
いま、家電業界は大きく変わりつつあります。デジタル家電、IoT家電、情報家電が次々と生まれ、製品は単品売り切り型から、売ったあとも顧客とつながり続けて価値を提供する製品へと変化しつつあります。さらに、いまや、モノに「あこがれ」る時代は終わりました。人々は、生活や体験が変化し、新しくなることにこそ、「あこがれ」る。パナソニックは、もう一度、人々の「あこがれ」の「生活」を、つくり出すことが求められる。
「一人ひとりの暮らしに寄り添い、一人ひとりの豊かな『ホーム』をつくる。そして、一人ひとりに暮らしの憧れを届けていきます。そのために、これまでの個別に機能を提供する家電のみにとどまらず、個々の家電が連携しながら、それぞれの生活シーン、空間に合わせた新たな体験を提供していきます。そして、その新しい体験を、家という空間を超えて、コミュニティ、ソサエティとも連携していくものにより進化させていきます」
と、本間さんはいいます。
この日、パナソニックは、寝具メーカーの西川産業と睡眠関連サービスの共同開発を開始すると発表しました。さらに、NTTドコモと、共同実証実験の実施も発表。省電力広域無線通信技術の「LPWA」を活用し、常時接続IoT家電を実現するためのものです。加えて、新たな事業創出を目的として、シリコンバレーに拠点を構える日系ベンチャーキャピタルのスクラムベンチャーズと共同出資し、スタートアップ企業を支援する「ビーエッジ」という新会社を3月中に設立します。それぞれ、「2018年度中にどんどん商品化して世に問うていきたい」と、本間さんは意気込みました。すごいスピード感です。
※左から、西川産業社長の西川八一行さん、本間さん、ドコモ取締役常務執行役員の古川浩司さん、ビーエッジ代表取締役社長の春田真さん
ほかにも、米グーグルの「Googleアシスタント」機能を内蔵したスピーカーとヘッドフォンを、2018年度中をめどに発売します。AI、ロボティクスの先端技術分野は、千葉工業大学との産学連携によるオープンイノベーションを推進。また、LINE社の提供するクローバー搭載スマートスピーカーと、パナソニックのIoT家電の連携も検討を進めるといいます。積極的に、自ら「オープン」になろうとする姿勢がうかがえます。この方向性は、間違っていないと感じましたね。
こんにち、「家電」といわれて、いちばんに思い浮かべるメーカーはどこでしょうか。東芝、日立、三菱電機、あるいはソニー、シャープ……。もはや日系ではない企業もあります。いま、白物から黒物まで、主要家電をフルラインナップでそろえる日本メーカーは、じつは、パナソニックしかありません。
パナソニックの家電は、ここまで、頑張って生き延びてきました。でも、次の100年は、どうでしょうか。決して油断はできません。しかし、パナソニックが、家電を通して人々の生活をより豊かに変化させ、本当に「あこがれ」をつくることができるのならば、2118年になっても、パナソニックは家電をつくり続けているに違いありません。