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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ソニー吉田新社長の経営方針の中身

2018年3月期決算で、20年ぶりに最高益を更新したソニーは、昨日、2020年度までの3年間の中期経営方針の説明会を行いました。説明に立ったのは、4月から新社長兼CEOに就任した吉田憲一郎さんです。


※ソニー社長の吉田さん

吉田さんは、前任の平井一夫社長時代、CFOとして、財務面から経営をサポートしてきました。決算会見では、以前から吉田さんがプレゼンを行ってきた。わかりやすい説明をする人だと思っていましたが、今回、改めてその印象を強く持ちました。

配布された資料がシンプルでわかりやすかったことに加え、吉田さんの語り口は、ゆっくりと慎重で、説得力があった。地に足がついているというか、浮つかないのも好印象でしたね。

「2020年度までの中期計画は、あえて、『第三次中期計画』と呼ぶこととしました。『感動』というミッションは変わらないからです。そして、平井が第一次中期で打ち出したソニーの変革は、これからも続く、ということです」
と、吉田さんは語りました。

さらに、「ソニーがミッションとする『感動』と事業ポートフォリオを踏まえたソニーの今後の経営の方向性は、一言でいうと、『人に近づく』です」と、説明しました。「人」とは、つまり、「感動する人=ユーザー」であり、「感動をつくる人=クリエイター」です。


※吉田さんのプレゼンテーション

具体的には、「ユーザーに近いDTC(Direct to Consumer)サービス」と、「クリエイターに近いコンテンツIP(知的財産)」を強化するといいます。その一環として、EMIミュージックパブリッシングを、完全子会社化することも発表しました。

吉田さんは、次のように語りました。「当社の今後3年間の課題は、コンテンツIP、DTCサービス、半導体IPへの継続投資と、AI×ロボティクス、医療に対する長期的な視点に立った取り組みだと考えております。この3年間は、利益成長よりも、リカーリング比率の増加などで、利益の質を高めることに軸足を置きます」

リカーリング型ビジネスの強化もまた、平井路線の継承といえます。

記者から「一次、二次の中期経営計画と比べて、吉田さんの色があらわれているのはどこか」と問われた吉田さんは、謙遜してか、「色は、あまり出ていない」として、次のように答えました。
「『感動』という大きなビジョンは変わっていません。ただ、それを突き詰めようとしたのが今回のメッセージです。それはまさに、感動をつくる人と、感動する人に近づく。したがって、コンテンツIPとDTCを、キーワードとしてあげました」

財務畑出身者というイメージからは意外なほど、数字の少ない発表でしたね。数値目標としては、大きなところでは、「営業キャッシュフロー(金融分野を除く)3年間累計2兆円以上」「連結株主資本利益率10%以上を継続」を掲げました。

吉田さんは、次のように発言しました。
「営業利益目標などは重要ですが、それを定めると、3年で利益を出すことにとらわれがちになります」
つまり、数値の独り歩きを心配するんですね。

気になったことといえば、数値目標の達成に向けて、いかに達成していくか、オペレーションやマネジメントに関する言及がなかったことでしょうか。

ソニーは、2008年以来、「ROE10%以上」を掲げ続けています。確かに、前期のROEは大幅に改善し、約18%となりましたが、継続的に10%以上を維持していくことは、そう簡単ではないでしょう。

売上高や営業利益率の向上はもとより、現場の地道なコスト削減や、ホワイトカラーの生産性向上などが重要になってくる。そこを、いかにオペレーション&マネジメントしていくか。

その答えは、ソニーの今後の成果から、見えてくるかもしれませんね。

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