Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

トヨタが挑むEVのポイント

電気自動車(EV)はなぜ、普及しないのか。航続距離や充電インフラの問題は解消されつつありますが、依然として、販売価格が高く、買いやすいとはいえない。それに、どうしても買いたいという決定的な魅力に乏しいですよね。

EVの最低価格は、日産「リーフ」が315万円、三菱自動車「アイ・ミーブ」が226万円、BMW「i3」が499万円、テスラ「モデル3」が390万円です。補助金分を引くと、もう少し安くなりますが、それにしても、現在の価格では、環境への関心がそれほど高くない〝普通の人〟に、EVを購入してもらうのはむずかしいといえるでしょう。

比較的地味な記事でしたが、「トヨタが、開発中の新型電気自動車(EV)の価格をハイブリッド車(HV)と同水準にする検討をしている」と、9月7日付の日本経済新聞が報じました。

トヨタにはもともと、「エコカーは、普及してこそ環境に貢献できる」という考え方があります。実際、97年に世界初の量産ハイブリッド乗用車として発売された「プリウス」は、累計販売台数1000万台をこえ、「エコカーの代名詞」にもなっていますよね。

「プリウス」は、もっともグレードの低い車種で約240万円です。EVの価格をHVと同水準にするということは、トヨタがEVの普及にいよいよ、本気になったということではないでしょうか。

EVの価格が高くなる理由の一つには、電池のコストです。その点、トヨタは、5~10年をメドにリサイクルの仕組みをつくるとともに、家庭用蓄電池としても使えるように、大きさなどの規格をそろえた「標準電池」の仕組みを考えているということです。

また、国内向けには、高齢者が使いやすい「小型EV」の展開、中国や欧米などの海外向けには、「大型EV」を展開するなど、各国でEV戦略を変える計画だとも報じています。

「小型EV」は、最終的にはペダルのないモビリティを目指す構想もあるようです。17年の東京モーターショーで発表した「コンセプト愛i」シリーズの中のバリアフリーの小型モビリティのようなイメージですかね。

それにしても、トヨタはこれまでEVの商品化には消極的でしたが、ここにきて、本格的にEVの取り組みを始めたようです。

かりにも、EVの価格が「プリウス」並みになれば、普及のハードルは、確かに大きく下がります。他の自動車メーカーにとって、それは脅威ですね。

トヨタがEVの価格を「プリウス」並みに抑えることの意味は小さくありません。トヨタが、これまでの遅れを取り戻すだけでなく、エコカーの勢力図を大きく塗り替える可能性があるからです。

EVの開発競争はまだ始まったばかりです。トヨタがEVに総力をあげる姿勢を明確にしたことで、エコカー競争の行方は、これまで以上に混沌としてきたといえるでしょう。

ページトップへ