Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

続々・東京モーターフェス2018に見る未来のクルマ

東京モーターフェス2018のレポート最終回です。

今年のモーターフェスのハイライトは、自工会会長の豊田章男さんが、ソフトバンク社長の孫正義さんを、トークショーのサプライズゲストとして招いたことでしょう。


※壇上で談笑する豊田章男さん(左)と孫正義さん

トークショーは、タレントのマツコ・デラックスさんの司会で進行しました。話題がコネクティッドカーにおよび、章男さんが孫さんの名前を口にした際、会場にどよめきが起こりました。2日前のトヨタとソフトバンクの記者会見の際、章男さんが孫さんにトークショーの話をしたところ、孫さんは「私も一緒に出ましょうか?」と応じ、急遽出演が決まったといいます。

トークショーでは、客席からさまざまな質問が出て、それに答える形で進行しました。さまざまな話がありましたが、孫さんは、持論の〝夢〟と〝志〟の話を展開。

「例えばピアノを買いたいとか、家を建てたいというのは〝夢〟。でも、ピアノを買いたいことを〝志〟とはいわない。それは個人の願望なんです。100万人、1000万人といった、多くの〝夢〟を叶えるのが〝志〟です。一度生まれたからには、自分のちっぽけな〝夢〟だけじゃなくて、できるなら多くの人の〝夢〟を叶えてあげたい。これが〝志〟です」
として、自らの経験について次のように話しました。
「僕が17~18歳で初めてマイクロコンピュータのチップの写真を見た時に涙を流して、『これからマイクロコンピュータの革命が起きる。情報革命だ』と思いました。この情報革命で多くの人々を幸せにしたい。世の中には、死ななくてもいいような病気や交通事故で死んでしまうとか、不幸なことがまだいっぱい残っています。でも情報革命やコンピュータの革命を突き詰めていくと、そういう問題が解決に一歩ずつ近づいて、人々が幸せになって笑顔が見られる。僕の最後のイメージは、地球の裏側の少女が、誰に感謝していいか分からないけど、『ありがとう』と笑顔でニコッと笑っているイメージです」

一方、自らを「リアリスト」と呼ぶ章男さんは、学生に対して、トヨタとソフトバンクが提携に至った経緯を、次のように語りました。

「うちのシェアリングの会社で、自動運転のディマンドサイドに対して、いろんな所に手を打っていたら、必ず前に座っていたのが孫さんだったんです。そこでリアルの世界を持っているトヨタが、(シェアリングの世界で)4~5周先を行くソフトバンクと提携し、卑下することなくリアルの世界で未来を自分のものにしたい」

トヨタとソフトバンクの提携が、今後どう進んでいくのかはまだわかりません。しかし、大きな可能性のある提携であることは間違いない。合弁で設立する新会社モネテクノロジーズが、「e-Palette(イーパレット)」によって、両社のいう「Autono-MaaS(自動運転によるモビリティサービス)」事業を軌道に乗せることができるならば、トヨタにとって、自動車産業の「100年に一度の大変革」を乗り切る切り札となるかもしれません。ソフトバンクにとっても、注力するモビリティ事業における大きな布石となります。

自工会主催のモーターフェスに、孫さんがやってきたことは、それだけで、自動車産業が大きく変わろうとしていることを象徴しているように思えましたね。

ページトップへ