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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ウェアラブルは絶好のチャンスだ!

ウェアラブル市場の現在、そして、今後の動向や如何に。マクロな立場からはさまざまな分析がなされていますが、今回はミクロな視点で考えてみましょう。

以下は、1月16日から18日までの3日間、東京ビッグサイトで開催された「第5回ウェアラブルEXPO」の印象記です。

従来、ウェアラブルといえば、スマートグラス(メガネ)とスマートウォッチ(時計)でした。ウォッチに関しては、アップル社が18年9月に「新型アップルウォッチ」を発表したほか、米国フィットビット社や同ガーミン社をはじめとするさまざまなメーカーが、主にフィットネス向けのスマートウォッチを発売し、この数年間でポピュラーな商品となりました。もっとも、「ウェアラブルEXPO」では、フィットビット社の新製品が展示されていましたが、それほど目新しい製品はありませんでした。

一方、グラスに関しては、レンズに情報を投影するのではなく、網膜に直接情報を投影するタイプのスマートグラスや、メガネスーパーが開発した普通のメガネに着脱可能な有機ELディスプレイのアタッチメント、音声をテキストにして表示できるスマートグラスなど、一昔前から大きく進化した製品が多数展示されていました。スマートグラスに関しては、グーグル社が15年1月に、一般消費者向けの「グーグルグラス」の販売を中止したこともあり、その本格的な普及に対し疑念を抱く声も少なくありませんでした。しかし、技術の進化とともに、いまや、ウォッチよりも注目度は数段高いといっていいでしょう。

ただ、スマートグラス以上に驚かされたのは、スマートウェア(服)やスマートキャップ(帽子)、スマートイヤフォンなどが登場し、ウェアラブルデバイスの多様化が急速に進んでいたことです。

とりわけスマートウェアには、繊維業界大手の帝人のほか、ミツフジというもともと西陣織の帯をつくっていた中堅メーカーが、センサーを自力で開発し、心拍数や眠気を図ることのできるスマートウェアを開発するなど、大小さまざまなプレーヤーが市場に参入していました。スマートウェアで正確なデータを記録するためには、センサーが体に密着した状態を保つなど、独特なノウハウが必要なので、センサーを生地にうまく縫製することのできる繊維メーカーが活躍できるそうです。

ちなみに、スマートウェアのデザインは、みぞおちのあたりにデバイスが付けられていること以外は、普通のTシャツとほとんど変わりありません。スポーツ用の高機能素材のウェアを思い浮かべていただくのがよいでしょうか。スマートグラスを装着したときの気恥ずかしさを感じることなく、抵抗感なく着ることができるという点も、市場の急速な拡大を後押しするはずです。

今後、ウェアラブル市場を牽引していくのは、「B2C」よりも「B2B」の分野だと思います。例えば、心拍数を常時モニタリングするスマートウェアは、ヘルスケアや介護の分野で普及することが容易に予想されます。眠気センサーや疲労度測定センサーを搭載したスマートウェアは、製造業や建設業の現場社員の健康管理や、きめ細かな労務マネジメントに活用できるでしょう。多様な機能を詰め込んだ「B2C」向けのスマートグラスやスマートウォッチよりも、特定のニーズに対応し、機能を絞り込んだ産業用デバイスの方が、ウェアラブル市場の主流になっていくはずです。

さて、「ウェアラブルEXPO」には最終製品のメーカーのみならず、部材メーカーも数多く出展し、折り曲げ可能なバッテリーや超小型の固体電池、導電性の繊維、匂いを測定するセンサーなど、新たなウェアラブルを支える部材が多数展示されていました。ウェアラブル市場の隆盛は、多くの日本企業にとって絶好のチャンスだと思います。それは、既存の製品を改善によって「小型化」する、日本のモノづくりの強みといいますか、DNAが最大限に生きる分野だからです。

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