「えっ、なんで?」一瞬、緊迫した空気に包まれました。トヨタが2019年3月期の業績予想を下方修正したからです。いったい、トヨタに何が起きたのか。
6日、決算会見に先立って配られた決算短信に、記者会見場は一瞬、ざわめきました。「トヨタが下方修正です。要因は不明です」とデスクに一報を入れる記者もいました。
トヨタ自動車が2019年3月期の純利益見通しを従来予想の2兆3000億円から1兆8700億円に引き下げたからです。
好調な業績を維持してきたトヨタが、ここへきて減益となれば、日本経済への影響は計り知れません。とんでもないことが起きると、一瞬、身構えましたね。
フタをあけてみると、下方修正の要因は、株式市況の悪化による保有株の下落によるものだとわかりました。有価証券の評価損3100億円を損益計算書に反映したためということで、あくまでも評価上の損益だということです。
米国の会計基準のルール変更も背景にあります。
「軽んじてはいけないが、株式の時価の変動によるものです。将来的な競争力を左右する変動ではない」と、決算会見の席上、執行役員の白柳正義氏は説明しました。
たしかに、本業は好調です。売上高は、29兆5000億円の従来予想を据え置き、営業利益も2兆4000億円と従来予想を据え置いています。
グループの世界販売台数の見通しは、従来の1050万台から1055万台に上方修正しています。
また、同日発表した18年4~12月期決算は、売上高が前年同期比3・1%増の22兆4755億円、営業利益は9・5%増の1兆9379億円、純利益は29・3%減の1兆4233億円でした。
「お客さまののぞむ原価に向かってつくり込んでいくことを意識しました。また、原価低減のプロ人材をつくることにも注力しました」と、白柳氏は、18年4~12月期について振り返りました。
そうなると、業績予想の下方修正は、〝落とし穴〟だったといわざるを得ません。保有株式の評価損の計上で、純利益が3割も減少したわけですからね。
どこに〝落とし穴〟がひそんでいるのか。どこまで目配りしなければいけないのか。
トヨタの経営は、つねにリスクと隣り合わせにあるのは間違いない。
「国際情勢など、問題は散在しています。何があっても俊敏に対応できる体質を確立したい」と、副社長の友山茂樹氏は述べました。