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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

松岡陽子さんフェロー就任、パナは変われるか

10月17日、パナソニックは、小さなビックリ人事を発表しました。フェローとして、グーグルのヴァイスプレジデントの松岡陽子さんを招聘するというものです。10月31日に、松岡さんが会見を行いました。


※松岡陽子さん

松岡さんは、71年に東京で生まれ、プロテニスプレーヤーを目ざして16歳で渡米。怪我で夢は諦めますが、一緒にテニスができるロボットを開発しようと、カリフォルニア大学バークレー校に進み、マサチューセッツ工科大学で電気工学とコンピュータサイエンスの博士号を取得。ハーバード大学で博士研究員を務めた後、カーネギーメロン大学教授、ワシントン大学教授として人体や脳のリハビリ機器の開発に取り組みました。

その後、09年にグーグルXの創立メンバーとなり、グーグルグラスや、現在のウェイモが手掛ける自動運転技術開発など、将来の事業の種まきをした。その後、ベンチャー企業のNestに参画、アップルのヘルスケア製品開発部門に勤務などを経て、グーグルに買収されたNestに戻り、グーグルのバイスプレジデント、グーグルNestのCTOを務めていました。

これだけの経歴をもつ彼女が、よくぞパナソニックにきたものだと思いますね。シリコンバレーの拠点であるパナソニックβプレジデントだった馬場渉さんが、シリコンバレー人脈で口説き落としたという話です。

パナソニックは、今回、彼女を「フェロー」という肩書で迎えました。彼女のような一流人材は、グーグルやアップルのようなテック企業、家電、自動車、ロボットなど、あらゆる業界から〝一本釣り〟の引き合いがあるはずです。企業の枠を超えて、インパクトのある人事ではないでしょうかね。

話を聞いて感じたのは、彼女が、パナソニックの文化と親和性のある人だということです。

もともと、ロボットを手づくりしていたほどですから、モノづくりには造詣が深い。パナソニックにきた理由については、「大学院を卒業したころから、私は〝みんなの暮らしをよくしたい〟がミッションなんです」と語りました。それには、生活に密着性した家電、さらには住宅や住設まで手掛けるパナソニックは、かっこうの舞台です。

実際、パナソニックミュージアムにあった「ぼくは婦人を解放したんや」という松下幸之助の言葉に感動したと語ります。家電が普及したことによって「今日、日本の婦人は遊ぶ時間もできた。楽しむ時間もできた。本を読む時間もできた」という言葉ですね。「暮らしをよくする」というミッションは、幸之助と共通している。

社長の津賀一宏さんについては、「一緒に話していてとても面白い人ですよね。話すたびに息が合って盛り上がる。応援されている、サポートをしてくれそうな感じ」と話しました。マネジメントとの相性も悪くない。

さて、彼女は、4人の子供を育てるワーキングマザーでもあります。仕事と家庭の両立について記者から質問が出ると、「みんなをモチベートしてあげたい」として、次のように語りました。

「やれないけど、やっちゃう。子どもを産むタイミングは、次はいつがいいというタイミングなんてこないから、産むしかない。子どもが産みたいなら産めばいいし、仕事がやりたいなら産まなければいいし、両方やりたいなら、難しいけどできるんだから、仕事を辞めて欲しくない」

企業文化を変えるには、時間がかかります。松岡さん本人も語っていましたが、すぐに結果は出ないでしょう。それでも、長い目で見れば、パナソニック、さらには日本企業の変化のキッカケになるのではないでしょうかね。

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