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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

豊田章男氏、自工会の大改革はなるか

日本自動車工業会会長の豊田章男氏は24日、二輪業界、大型車業界から副会長を迎えるほか、委員会組織を12から5に整理し、事業遂行に最適な編成に見直すとともに、各組織の役割を明確にすると発表しました。なぜ、いま自工会の大改革なのか。そこには、日本の自動車産業を背負って立つ、豊田氏の強い使命感があります。


※写真は、2018年5月18日の自工会定例会見

豊田氏が自工会の改革を決意した背景には、こんな事情があります。本来、自工会会長の任期は1期2年で、トヨタ、日産、ホンダの社長が会長職を持ち回りしてきました。ところが、2018年5月に2度目の会長に就任し、20年までの予定だった豊田章男氏の任期は、特別に22年5月までになりました。

豊田氏の任期延長は、自動車産業が変革期を迎えるなか、自工会の会長職が2年で変わることが最善なのかどうかという議論から決まったんですね。

「4年の任期をもらったからこそ、この時期に組織改革に踏み切った」と、豊田氏は24日のオンライン会見の席上、述べました。

自工会に限らず、企業でも短い周期でトップが交代していては、継続的な改革には取り組めない。改革の責任は果たせません。

ただ、豊田氏の自工会改革の意志は、ここにきて固まったわけではありません。豊田氏が一度目に会長職に就いたのが2012年から2014年。このとき、すでに豊田氏は、自工会の硬直した組織を変えなければいけないと考えていたのではないでしょうか。

自工会は、1967年にいまの形になり、排ガス規制や貿易摩擦などに自動車産業の〝軸〟として立ち向かってきましたが、50年来の組織のままでは、自動車業界の大変革期を乗り切れないと見ていたに違いありません。

2018年6月28日に行われた、JAMAGAJINE「スペシャル対談 WE LOVE CARS WE LOVE BIKS」でのマツコ・デラックス氏とのトークで、「2年ごとに振り回されずにやっていく」と、豊田氏は語っています。

自動車業界が現在の難局を乗り越えるには、「オールジャパン」の旗の下に一つになる必要があります。それには、まず自工会自身が変わらなければいけません。

これまでは、四輪メーカーの社長が会長、副会長に並んでいましたが、ヤマハ発動機社長の日髙祥博氏、いすゞ自動車社長の片山正則氏の2名を副会長職に迎えました。これは、「CASE」の時代が到来し、業界の構図が変わっていることへの対応です。

また、これまでの委員会組織では、理事会の下に常任委員会があり、その下に、「知財」、「電子情報」、「税制」、「環境」などの委員会がぶらさがる形をとってきました。つまり、三層構造になっていたわけですが、それではスピード力やコミュニケーション力に限界があります。

10月1日付けの組織改革では、理事会直下に「次世代モビリティ」、「安全技術・政策」、「環境技術・政策」、「サプライチェーン」、「総合政策」の5つの委員会がぶらさがる形にし、より機動的な活動ができるようにする方針です。

「委員会組織をシンプルにして、その分野に詳しい専門家を委員会の実質的なメンバーにし、肩書きを超えて討論できるようにしたい」と、豊田氏は述べました。

新型コロナウイルスの影響を受けて、国内の自動車需要は落ち込んでいますが、市場の冷え込みばかりに目を向けていては、スピードに乗り遅れます。

米テスラが、3年後をメドに2万5000ドル(約260万円)の新型EVを発売するというニュースが飛びこんできたかと思えば、ソニーは今年1月、EV試作車「VISION-S」を発表しました。まったく油断はできません。

日本の自動車産業を背負って立つために、自工会はいまこそ、オールジャパンの旗印のもと、新しい業界団体に生まれ変わらなければならない。自工会改革を何としても成し遂げようという豊田氏の思いは切実だと見ていいでしょう。

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