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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ホンダは、去るも地獄、残るも地獄か

ホンダといえば、新社長の三部敏宏氏による「脱ガソリン車」宣言が話題です。2040年までに全世界の新車販売をすべて電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)にするという、チャレンジングな目標です。実現への道のりは平たんではありません。

ホンダは14日、2021年3月期の連結決算をオンラインで発表しました。売上高にあたる売上収益は前期比12%減の13兆1705億円、営業利益は同4%増の6602億円、純利益は44%増の6574億円でした。

また、2022年3月期の売上収益は15%増の15兆2000億円、営業利益は6600億円を予想しています。

営業利益6600億円を守り切れるかどうか。というのも、今期の四輪車のグローバル販売は、10%増の500万台を計画していますが、そこには北米の需要回復と中国が織り込まれているんですね。米中対立が問題視される中でリスクはないのかどうか。コロナ後の需要回復の波に乗っていけるのかどうか。

原材料である貴金属の高騰と同時に、半導体の供給不足の問題もあります。「四輪車500万台という販売計画は、原材料や半導体のリスクを織り込んだ数字」と、副社長の倉石誠司氏は述べました。

中長期的な課題はなんといっても、2040年の「脱ガソリン車」の実現です。

「脱ガソリン車」への取り組みは、GMとの協業で進めていくことになると思いますが、どこまでGMとやっていくのか。24年にGMとの協業で大型EV2車種を投入すると発表していますが、具体的な協業の道筋ははっきりしません。14日の決算会見でも、倉石氏から具体的な方向性は示されませんでした。

2022年3月期は過去最高となる8400億円の研究開発費を投じる見通しで、今後6年間で5兆円程度を研究開発費として投入する計画ですが、次世代電池の開発やバッテリーの調達など、課題は山積しています。

「脱ガソリン車」で期待できるとすれば、ホンダが1972年に低公害エンジンの「CVCC」を開発し、マスキー法を克服した歴史です。あのころは負けん気の強い、やんちゃなホンダ魂が存在しました。

ホンダは昨年10月、21年シーズン限りでのF1撤退を発表しました。聖域であった本田技術研究所も事実上、解体しました。思い切った決断です。八郷前政権は最後に踏ん張りましたよね。それにしても、やんちゃさをなくしたホンダが、今後「脱ガソリン車」というチャレンジングな目標に立ち向かっていけるのかどうか。

「脱ガソリン車」宣言自体は、間違っていないと思います。エンジンの競争力で成長してきたホンダですが、トヨタのような「全方位戦略」はホンダの規模では考えられません。ホンダの存続のためにも、あえてエンジンの看板を捨てるという思い切った決断は、避けては通れなかったでしょう。その意味で、方向性は正しいと思います。

ただ、気がかりなのは、「脱ガソリン車」の道筋が描けていないように見えることです。

ホンダにしてみれば、選択肢はそれしかない。だとしたら、「残るも地獄、去るも地獄」といったところでしょうか。経営陣の覚悟が問われます。

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