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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

豊田章男氏はなぜ経営のギアアップをするか

トヨタの経営のスピードが格段に上がっています。社長の豊田章男氏は、「未来」に向けて一気にアクセルを踏み込んでいます。豊田氏が見ているのは、従来の延長線上の「末来」ではありません。自らの手でまったく新しい「末来」をつくろうとしているんですね。

2020年1月、トヨタは米ラスベガスで開かれた「CES」で「ウーブン・シティ」の建設を発表しました。その2か月後の3月には、ウーブン・シティの通信インフラの構築をめぐって、NTTとの資本業務提携を発表しました。

さらに3か月後の7月には、自動運転を手掛ける「TRI-AD」の社内体制の改変を発表。持ち株会社「ウーブン・プラネット・ホールディングス」のほか、自動運転技術の開発などを行う「ウーブン・コア」、ウーブン・シティの新たな価値創造を担う「ウーブン・アルファ」の二つの事業会社を設けたんですね。これらの新会社には、もはや「トヨタ」の名前はどこにもありません。「トヨタ」の名前を冠すると、どうしてもスピードがにぶるからです。

そして、2021年2月23日には東富士工場の跡地で「地鎮祭」を行い、ウーブン・シティの開発が本格的に動き出しました。ウーブン・シティの発表からわずか、一年ちょっとしか経っていません。にわかには信じがたいスピードです。

こうした矢継ぎ早の展開は、従来のトヨタでは考えられませんでした。経営のスピードはここへきて格段と上がっています。

なぜ、そんなに早く物事が進められるのか。社長の豊田章男氏が、ウーブン・シティのプロジェクト・メンバーと3週間おきにミーティングを行い、意思決定を重ねているからです。

「私と担当が3週間に一度、方向性の確認をしています。私がその場で、その時の最新情報をもとに決定をしていきますが、それは3週間前に決定したものと違ってもいいというルールなんです。その都度、環境変化を踏まえ、決定をしていこうと進めています」と、豊田氏は語っています。

たしかに企業を取り巻く環境が、これまでにないスピードと大きさで加速していることを考えれば、「3週間前の決定」は、もはや過去のものということかもしれません。

しかも、すべてをつくりあげてから評価、検証するのではなく、その場でその場で方向性を定め、小さな単位でチャレンジを繰り返す。前言撤回も許される。まるでシリコンバレー発の「アジャイル経営」そのものですね。そのスピードは、もはやアップルなどGAFAと比べても遜色ないといえるのではないでしょうか。

じつは、生産のスピードも一段と加速しています。トヨタは現在、脱炭素化の流れの中で電池の生産能力を高める必要性に迫られていますが、生産を統括する執行役員の岡田政道氏は、先週12日の決算説明会で、電池の生産について「できるだけ小さな単位で、あるいは小規模な原単位のラインを短いリードタイムで用意して、小刻みにつくっていくことをやっていきたい」と述べました。

経営スピードを上げ、一気にアクセルを踏み込む先には、どんな「末来」が待っているのか。豊田章男氏が描く「末来」、たとえばウーブン・シティの姿は、意外と早く明らかになっていくことでしょう。

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