「新興国のコロナ感染拡大や半導体需給の逼迫で、世界中で生産が停滞した前半期でした」と、トヨタCFOの近健太氏は振り返りました。取引先の工場停止や物流の乱れ、半導体不足などの影響から、自動車部品のサプライチェーンには混乱が広がっています。それでもトヨタは、21年9月中間連結決算において、売上高、営業利益、最終利益のいずれも過去最高を更新しました。
トヨタ自動車が4日に発表した今年4月から9月までの中間決算は、グループの売上高が15兆4812億円、営業利益が1兆7474億円、税引き前利益が2兆1440億円、当期利益が1兆5244億円となり、中間決算としては過去最高を更新しました。
為替の円安効果のほか、販売台数の増加などが要因です。
「販売台数が落ちなかったのは、販売店が在庫の融通や効率的な販売などで、クルマを届けられたことが大きかった」と、近氏はオンライン会見で述べました。
加えて、新車市場の需給ひっ迫による中古車価格の高止まりのほか、台数不足でインセンティブを低く抑えられたこともプラス要因にあげています。
トヨタは今後、生産の挽回を進めていく計画ですが、年間の「トヨタ」「レクサス」の生産計画は、930万台から900万台に引き下げているんですね。
近氏は、「今期生産計画の900万台は若干保守的に見ています」としながら、「リスクは相当低くなっています。減産リスクはあっても、相当高いレベルまで生産が回復するのは間違いない状況です」と述べました。
部品調達の状況を見極めながら、今後、どこまで減産を挽回できるか。
また、2022年3月期の業績見通しについては、これまで2兆5000億円としていた営業利益予想を2兆8000億円に上方修正しました。ただし、近氏は「円安の影響を除けば、資材高騰などにより、実質は下方修正となります」と説明しています。
円安による利益拡大は、〝真の実力〟ではないということでしょうね。
思い出されるのは、2016年5月11日の決算会見の席上で、社長の豊田章男氏が次のように語っていたことです。
「この数年間の決算は、いわば為替による〝追い風参考記録〟の部分が多かった。その風が止んだことで、自分たちの等身大の姿が見えてきた。〝真の実力〟を追求し、追い風がなくなった今、意志が本物かどうか試される」
トヨタは今後、為替の押し上げ影響を抜きに、真の利益拡大を成し遂げられるか。
「コロナ禍で得た学びを定着させるべく、気を引き締めて取り組みを継続する」と、近氏は語りました。
引き続き、供給面や資材高騰には予断を許さない状況ですが、トヨタはどこまで生産を挽回できるか。そしてどんな手を打ってくるのか。注目したいですね。