日本自動車工業会は18日、トヨタ自動車社長を務める豊田章男氏の会長続投を発表しました。自工会会長は1期2年で交代し、トヨタ、ホンダ、日産の3社の社長が交代で務めるのが恒例です。豊田氏は2018年から2期連続に加え、今回3期目に入るわけです。任期は2024年5月までの延長となります。
「これまでの危機対応で得た経験が難局に役立つのならばと思い、引き受けました」と、豊田氏はオンライン会見で述べました。超異例のことです。
というのは、カーボンニュートラルという大命題にのぞむには、豊田氏の強いリーダーシップのもとに日本の自動車産業が一つになることが求められるからです。
とはいえ、3期連続となると、〝豊田氏頼み〟が出かねません。今回、注目すべきは、副会長にホンダの三部敏宏氏、日産の内田誠氏、スズキの鈴木俊宏氏が就任。ヤマハの日髙祥博氏、いすゞの片山正則氏に加えて、自工会の永塚誠一氏が続投し、6人の副会長の新体制を築いたことです。スバル、マツダ、日野はトヨタグループですから、その意味で日本の自動車業界の総結集といっていいでしょう。
「これにより、自動車産業をみんなで発展させていくという態勢が整ったと思っている」と、豊田氏は語りました。
ご存じの通り、グラスゴーで開催されたCOP26では、ゼロエミッション車への移行が宣言されました。日本の自動車産業にとっては、大変厳しい宣言が下されたことになります。これまでの自動車産業のあり方を根底から問われることになり、とてもではありませんが、一社では対応できません。
「自動車産業は、カーボンニュートラルに強い危機感を持っている」と、日本自動車工業会副会長の永塚誠一氏はオンライン会見で述べました。
豊田氏は常々、「カーボンニュートラルの敵は炭素で、内燃機関ではない。炭素を減らすには、国や地域の事情に見合った取り組みが必要」と述べてきました。その方針を貫くにあたっては、風当たりが強まることが予想されます。また、各国政府からの反発を受けて立つ覚悟も求められるでしょう。
それでなくても、COP26では、複雑な構造の中で各国による激しい〝綱引き〟が行われました。各国の思惑が入り乱れ、交渉は一筋縄ではいきませんでした。
こうした厳しい交渉事に際しては、政府や業界団体が一体となって、官民一体での取り組みを行うことが不可欠です。
日本には、数多くの業界団体がありますが、環境問題だけでなく、今日の産業構造の変化、企業活動の国際化などを思えば、いまこそ業界団体の力が試されているといえます。
自工会は、豊田氏のもとにカーボンニュートラルを闘う新たな体制を整えたといえます。会見中、豊田氏は何度も「みんなで一緒にやっていく」「みんなで協調しながらやっていく」という言葉を繰り返しました。かつてない困難に挑む自工会。その取り組みは、これからの日本の業界団体の〝ひな形〟になると思います。