日本は、国際標準化戦略を苦手としています。
その結果、自動車をはじめ、鉄道などさまざまな分野で、
国際標準化に遅れを取っています。
しかし、少しですが、改善の動きが出てきました。
一部で報道されているように、ISO(国際標準化機構)の
TC22(第22専門委員会、自動車分野)において、
初めて、四輪車領域のSC(技術領域別組織)の幹事国となったのです。
ISOは、自動車分野の技術領域を再編しました。67年ぶりのことです。
自動車分野は、電子化や、ハイブリッド技術、
自動運転、ITS(高度道路交通システム)技術など、
さまざまな新技術が生まれ、どんどん進化しています。
ISOは、新技術に適合するように、
従来26に分類されていた技術領域を、新たに11に分類し直したのです。
日本が幹事国となったのは、「SC32」と呼ばれる、
「電子・電装システム」部門です。
議長には、デンソー電子部品基板システム開発担当部長で、
自動車技術会の電子・電装部会委員長の秋山進氏が就任しました。
日本は、従来、「二輪」部門では幹事国となっていましたが、
四輪の分野で幹事国となるのは、初めてです。
「電子・電装システム」部門の幹事国は、発足以来ドイツが務めていましたが、
そこに、日本が斬り込んだというわけです。
ISOの技術領域見直しに伴って、各技術領域について、
今回、あらためて幹事国が決められました。
幹事国は、もちろん中立的な立場ではありますが、
各国からの意見をとりまとめるなかで、情報が集まりますし、
日本からの提案もしやすくなるとされます。
「SC32」の幹事国となったことで、自動車の機能安全、
電子制御ユニットなどの規格に関して、
標準化を有利に進めることができると考えられます。
車のなかでも、電子システムは、近年急速に発達した分野です。
その標準化を進めることは、かねてから大きな課題とされてきました。
というのは、電子システムが増えるにしたがって、
自動車に搭載するワイヤーの量が格段に増えている。
レクサスには、50kg分のワイヤーが搭載されているともいわれます。
電子システムといっても、エンジンをコントロールするシステムもあれば、
ブレーキ、ステアリングなど、それぞれの機能に対応したシステムがあります。
そして、実際に急ブレーキをかけた際には、
それら複数のシステムが連携して働かなくてはいけない。
現状は、それを実現するために、
ドロ縄式に、ワイヤーハーネスが張り巡らされている。
スパゲッティ状態だといわれています。
しかも、整理されておらず、複雑なので、制御が難しい。
どこかに設計変更が入ろうものなら、芋づる式に変更が必要になる。
さらに困ったことには、今後も自動車の電子システムは、
ますます複雑化していくことが予想されるのです。
そこで、ボディー、安全などのドメインコンピュータを設け、
その下に、階層別に電子システムがぶら下がるようなシステムを設計できれば、
理想的といわれています。
整理されたアーキテクチャーをつくれば、
どこかに設計変更が入っても、すぐに対応でき、制御も簡単になります。
日本は、幹事国として、こうした「電子・電装システム」の
理想のアーキテクチャー構築をとりまとめることが、求められているのでしょう。
ただし、日本は、「電子・電装システム」部門の幹事国であり、
「二輪」部門でも、イタリアと並んで幹事国となりましたが、
自動車分野全体の幹事国はフランスのうえ、
「データ通信」「車両性能・車体・シャシー」「駆動・パワートレーン」など、
ほかの9部門の技術領域別組織の幹事国は、
ドイツ、フランス、米国、イタリアが占めています。
世界の自動車技術の標準化は、まだまだ欧米がリードしているのです。
今回の「電子・電装システム」部門の幹事国をきっかけに、
日本は、少しでも存在感を発揮する必要がありますね。
だって、トヨタという世界一の自動車メーカーを有する国ですからね。