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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

テスラ自動運転中事故の教訓!

かねてから心配されていた“自動運転”に水を差しかねない事故が、ついに起きました。

5月7日、米電気自動車大手テスラの「モデルS」による死亡事故が発生しました。これが、オートパイロット(自動運転)機能を使用中だったんですね。6月30日、米運輸省道路交通安全局が調査に入りました。

報道に沿って、この事故をまとめてみます。
事故は、米フロリダ州のハイウェイの分岐点で起こった。自動運転中の「モデルS」の前を、左折しようとする大型トレーラーが横切る形になった。「モデルS」は、トレーラーの下に、ブレーキをかけることなく突っ込み、「モデルS」の運転者が死亡した。

テスラは、オートパイロット機能を使っていても運転の責任は基本的に運転者にあるとしています。実際、つねにハンドルを握り、手動に切り替えられるようにしておくことを求めている。ただ、「自動運転」をうたえば、機能を過信する運転者がいることなど、以前から問題点は指摘されていました。

今回、テスラは、ブレーキが作動しなかったことについて、「オートパイロットと運転者はともに、晴れた空が背景だったためにトレーラーの白いサイド部分を認識できなかった」としています。
トレーラーの車高が高かったため、搭載されていたAI(人工知能)が、下を潜り抜けられると判断した、という報道もあります。
詳しいことは、調査結果を待たねばなりません。

今回は犠牲者が運転者一人のみです。だからいいとはいいませんが、かりにも、自動運転中の車が複数の人を撥ね、犠牲者が3人とか、5人に及ぶような事故が起きたらどうなるか。
おそらく、自動運転に対する社会の目はいっそう厳しく、懐疑的になり、ようやく緒に就いた自動運転普及の機運は、一気にしぼんでしまうでしょう。
それを危惧して、「事故が怖いから、慎重に慎重を重ねるのだ」と、何人かの自動運転の技術者から聞いています。

自動運転は、期待先行でプラス面が注目されがちですが、当然、マイナス面もあります。
極端な話が、突然目の前に障害物が現れた際、ブレーキを踏みながら障害物に追突するか、右にハンドルを切って歩行者と接触するか、反対にハンドルを切って崖から落ちるか、という選択肢を迫られた場合、AIは、いったいどう判断を下すのか。その判断に、人間はどう介入するのか。
そういったシビアな問題は、詰め切れていない。というか、詰めようがない面もあるのではないでしょうか。

かといって、自動運転は、推し進めていくべきだと思いますが……。
期待ばかりではなく、実際に起きうる問題と、逃げずに一つひとつ向き合い、社会的なコンセンサスを築いていくことが求められています。一件の事故から、一つでも多くの教訓を得ていかなければなりません。

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