出光創業家が、昭和シェルとの合併話に反旗を翻しています。会社は“もの言う創業家”にどう向き合ったらいいのか。
創業家だからといって、どこまで経営への関与を認めるべきなのか。大きな課題が突き付けられていますね。
出光興産の創業家が、6月28日の株主総会で、来年4月に合併する予定だった昭和シェル石油との合併計画に反対を表明しました。年内の臨時株主総会で、33・92%の株式を保有する創業家が反対すれば、合併計画は否決され、石油業界再編は白紙に戻る可能性があります。
では、なぜ、創業家は反対の声をあげたのでしょうか。
出光興産は1911年、出光佐三が九州の門司で出光商会を創業したことに始まります。90年代に経営が悪化。02年まで創業家が社長を務めましたが、02年、天坊昭彦氏が初の非創業家社長となり、06年には上場を実現させました。
当然、創業家としては、経営への影響力が弱まると焦るわけです。そこで、06年の上場時、重要事項の決定に拒否権を行使できる3分の1の株を死守した。それが、いまになって、大きな意味をもつことになるんですね。
現在、出光興産のような石油元売りは、人口減やエコカー普及によるガソリン需要の減少により、厳しい経営環境に置かれています。経営の効率化に向けて再編が進むなかで、業界2位の出光は5位の昭和シェルとの経営統合に向けた協議を進め、15年7月には基本合意に達していました。
出光の経営陣にしてみれば、昭和シェルとの合併は、生き残りに向けた必須の手段だったわけですよ。
ところが、各紙が報じているように、今年1月末、創業家の出光昭介氏は、「昭和シェルとは企業風土が違う。合併には賛成できない」と反旗を翻しました。出光昭介氏と出光興産社長の月岡隆氏との話し合いは、その後も平行線をたどったままだというのですね。
出光の例に限らず、このところ、“もの言う創業家”が目につきます。セブン&アイ・ホールディングスや大戸屋ホールディングスなど、創業家が隠然たる力をもち、経営陣と対立する事例があとを絶ちません。
創業家の存在は、企業のブランドイメージを高める役割を果たすことから、一概に否定することはできませんが、創業家と経営陣との距離感やバランスが非常に悩ましい問題であることは確かですね。
ましてや企業統治に悪影響を及ぼしたり、株主の利益を損ねたりすることになれば、創業家はマイナスの存在になりかねません。つまり、創業家の存在は、ちょっと失礼な言い方になるかもしれませんが、扱い方一つで「毒にも薬にもなる」ということではないでしょうか。
出光の“創業家の乱”はどう決着するか。経営陣はいかに創業家と対峙するか。
今日7月11日、月岡社長と創業家側との会談が予定されていますが、交渉は難航することが予想されます。