31日、虎ノ門ヒルズフォーラムで、来日中のオランダ国王ご夫妻ご臨席のもと、
オランダのラボバンク主催の「食品・アグリビジネス会議」が開催されました。
世界の人口が増え続けるなかで、食料危機が指摘されています。
しかも、より多くの食料を生産しようとすれば、環境に負荷がかかります。
また、新興国での人口の都市集中により、農業人口が世界的に減少しています。
どうすれば、世界の食料を確保できるのか。
注目されるのが、オランダの植物工場です。
実際、オランダも日本も、農家の数が大幅に減少しています。
加えて、両国ともに、比較的小規模な農業が主流です。
「私は、96年に初めて日本を訪れました。当時、日本の農業は高齢化などの
問題を抱えていました。ところが、20年弱たったいまでも、その問題は続いています。
何も変わっていませんね」
と、パネルディスカッションの席上、種子技術を担うオランダ・インコテック社の
上級執行取締役役員ヤンウィレム・ブロイキンク氏は指摘しました。
つまり、日本の農業は何も進化していないということですね。
一方、オランダ農業は成功しています。
オランダは、米国に次いで世界第2位の農業輸出国です。
オランダ農業の成功の要因はどこにあるのでしょうか。
5億人以上の規模を有するEUの消費者市場において自由な競争が可能なこと、
研究開発、農業改良普及事業、教育など、国をあげて強い農業を推進してきたことなど、
いくつかの理由があげられていますが、最大の要因は、世界一の植物工場にあります。
また、オランダは、植物工場で生産されたトマトやパプリカなどを輸出するのみならず、
ソフトを含めた、植物工場のプラント輸出に力を入れています。
それに対して、日本の農業は内向きであることが、両国の違いとしてあげられるでしょう。
ただし、日本の農業にもよい点はあります。
それは、品質の高さです。
これは、複数のパネラーが強調していました。
そこで、オランダと日本は、農業において協力関係を深め、
両国がともに学び合えば、大きな成果が得られるのではないか。
そんな発想から、JA全農、高知県、NEC、石巻次世代施設園芸コンソーシアム、
キッコーマン、村上農園などが、オランダの農業関係団体とさまざまなかたちで
提携を行いました。画期的な試みといっていいでしょう。
そして、今日、オランダ国王ご夫妻立会いのもと、その調印式が行われたのです。
その一つが、オランダのコッパート・クレス社と村上農園です。
村上農園は、コッパート・クレス社が生産する「マイクロ・ベジタブルズ」と
呼ばれる野菜を2015年夏から日本で生産し、おもにホテルやレストランなどの
外食向けに販売します。
コッパート・クレス社は、村上農園が得意とする豆苗やブロッコリースーパースプラウトを欧米で生産、販売し、家庭用市場を開拓します。
いずれも、植物工場での生産です。
これまで、日本の農業のビジネスモデルとして、オランダの植物工場があげられて
きましたが、こうした提携により、日本の農業の再生に向けた、力強い一歩が
踏み出されたといっていいでしょう。