ホンダは17日、新型の燃料電池自動車(FCV)のコンセプトカーと
外部給電器のコンセプトモデルを初披露しました。
じつは、トヨタは明18日、世界初の市販FCVを発表します。
これにぶつけるように、ホンダはFCVのコンセプトカーを発表したわけです。
ホンダは、水素を次世代の有望なエネルギーととらえ、
FCVを究極の環境車と位置づけて、80年代後半から研究開発を進め、
99年には実験車両を公開しました。
その後、改良が加えられ、02年には「FCX」と名づけられて、
日米の官公庁向けに納入されました。
私は、この燃料電池車に試乗したことがあります。
思いのほか、加速性はよく、静粛でスピードが出るのに驚いた記憶があります。
さらに、08年には、「FCXクラリティ」という名称で進化したFCVが
これまた官公庁向けにリース販売されました。
一方、トヨタもまた、FCVを究極の環境車と位置づけ、開発を進めてきました。
開発に着手したのは、90年代初めです。
トヨタは02年に「トヨタFCHV」を日本とアメリカで限定販売したのを皮切りに、
08年には、「トヨタFCHV-adv」を特定ユーザー向けに発売し、
課題だった1回の水素充填の航続距離を約330キロから830キロへと
向上させました。
当時、FCVの価格は1台あたり1億円といわれ、
一般の消費者が手を出せるようなものではありませんでした。
いかに生産コストを削減するかが普及におけるポイントといわれてきました。
また、ユーザーにとって気になるのは、水素の価格です。
ガソリンと同等に近い価格でなければ、
燃料電池車が一般に普及するのはむずかしいばかりか、
航続距離も課題とされてきました。
ホンダが08年に販売した「FCXクラリティ」は、
約5分で再充電でき、およそ500キロの走行が可能となりました。
満タン充電にかかる費用は、5000円から7000円と想定されました。
ざっくりいって、ガソリン車と同等といえるでしょうね。
そして、今日発表された「Honda FCV CONCEPT」は、
さらなる性能向上とコストダウンを目指しています。
搭載された燃料電池スタックは、従来型より33%の小型化を図りながら、
出力は100kW以上、出力密度は3.1kW/Lと従来比で約60%向上。
また、700Mpaの高圧水素貯蔵タンクを搭載し、700km以上の航続距離を実現。
水素タンクの再充電は、約3分程度で完了します。
一方、トヨタは明日、2014年内に市販するFCV「ミライ」を正式発表します。
価格は700万円程度といわれていますが、政府が検討している補助金を含めれば、
実質的な負担は500万円程度になると見られています。
そこまで価格が下がれば、一定の台数は出るでしょうね。
振り返ってみれば、ホンダは、アメリカで1970年に設けられた排気ガス規制法
(マスキー法)を、新開発のCVCCによって世界で最初にクリアしました。
つまり、環境対応車の先鞭をつけたのは、ホンダです。
いまなお、ホンダにはその自負がありますね。
実際、その後も、ソーラーカーレースで何度も優勝するなど、
環境技術で世界をリードし、ホンダと環境は切り離せないものになりました。
そうした流れのなかで、ホンダはハイブリッドの開発に邁進してきました。
にもかかわらず、思い起こせば、ハイブリッドの開発において、
ホンダはトヨタのリードを許したんですよね。
97年3月、トヨタが世界初の量産ハイブリッドカー「プリウス」を発表した。
ホンダは、ハイブリッド車「インサイト」の開発を進め、発売を直近に控えていました。
ホンダの技術者たちは、大いにくやしがりました。
そして、今回のFCVでまたしても、ホンダはトヨタに先を越されたわけです。
ホンダは、これまでFCVの市販をトヨタと同様に2015年中としていました。
ところが、トヨタが市販を前倒しするなか、
ホンダは市販を2015年度中と訂正したんですね。
「先般からいろいろな課題があったので、念には念を入れて開発を進めるため、
若干時間をいただきたい」
ホンダ社長の伊東孝紳さんは、記者会見の席上、語りました。
つまり、「フィット」のリコールがFCVの市販を遅らせ、足を引っ張ったわけですよ。
ホンダは、相次ぐリコールで大変なダメージを受けたということですね。
思わぬところに魔物が潜んでいたといわざるを得ませんね。
巻き返しが期待されるところです。
ホンダとトヨタが環境対応車をめぐって、ツバ競り合いすることで
日本の自動車産業は、世界をリードするパワーをもち続けることができるわけですからね。