Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

休眠工場の“転身物語”

本日付の日経新聞電子版に、
「パナソニック、デジカメ生産を中国に移管」という記事が掲載されていました。

記事によると、パナソニックは今春をめどに、
同社のデジカメの約半数にあたる約150万台を生産してきた
福島工場のラインを停止し、中国・福建省のアモイ工場に移管する。
これによってコスト競争力アップを図る、と。

コンパクトデジタルカメラ市場は、
高性能カメラ搭載のスマホにのされるかたちで、縮小の一途をたどっています。
パナソニックは14年3月期、324万台を販売し、
世界シェア6位にもかかわらず、
2期連続で営業赤字に陥るなど、相当厳しい状況が続いていました。

パナソニックは、デジカメ事業をテレビやエアコンと並ぶ“課題事業”と位置付け、
黒字化に向けて構造改革を進めてきましたから、
生産コストの安い中国工場への生産集約は、当然といっていいでしょう。

興味深いのは、中国へ移管したあとの遊休施設の使い道ですよ。
記事では、福島工場は植物工場として活用するほか、
車載関連機器などの部品を実装する業務を残すとしています。

パナソニックは2014年3月から、
福島工場の一部を植物工場に転用し、
レタスや水菜など16種類の野菜を生産してきました。
照明や空調、ネットワーク、省エネなどの最先端技術を駆使しながら、
生産性向上や品質安定化、コストダウンを実現するための
ソリューションの研究開発を進めてきたわけです。
今回の生産移管をきっかけに、
この取り組みがさらに加速するのは間違いないと思いますね。

また、パナソニックにとって、自動車関連事業は、
2018年度売上高2兆円を見込む、大黒柱的な存在です。
パナソニックは遊休施設を、
今後成長が見込まれる事業分野へと積極的に振り向けています。

もっとも、パナソニックのみならず、大手電機メーカーを中心に、
遊休施設をこれまでとは違った仕方で活用する動きが広がっています。

前にも触れましたが、富士通は14年1月、
福島県会津若松市の半導体工場の一部を植物工場として転用し、
カリウム含有率の低いリーフレタスを生産しています。
東芝は14年11月、神奈川県横須賀市の
旧フロッピーディスク工場をリノベーションし、
完全人工光の植物工場「東芝クリーンルームファーム横須賀」を稼働させました。

ほかにも、ソニーは、東日本大震災で被災し、遊休状態になっていた
宮城県多賀城市の「仙台テクノロジーセンター」の一部を、
自治体に10年間にわたって無償提供。
研究・工場施設は、最先端の研究開発から生産までが可能な
インキュベーション施設「みやぎ復興パーク」へと変身しました。

同パークでは、東北大学による次世代自動車に関する実証実験が進められているほか、
ベンチャー企業が、LED照明を利用した世界最大級の植物工場をオープンするなど、
かなりトガった試みが進められています。
もっとも、遊休施設の“有効活用”なのかどうかは微妙なところがありますが、
最先端の工場設備の可能性をフルに生かしているのは間違いないでしょう。

ご存知のように、歴史的な円高が進み、
生産拠点の海外移転が相次ぎ、国内製造業の空洞化が進みました。
まあ、それを逆手に取って、遊休施設を活用し、
新たな産業の創出への挑戦を進めるというのも、一つの知恵ですわね。

前の記事:

次の記事:

ページトップへ