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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

『サムスン・クライシス』① なぜ人材を引き抜くのか

21世紀に入って以降、サムスンが驚異的な成長を遂げ、
世界のトップに躍り出ることができたのは、なぜでしょうか。

サムスンは、日本のみならず米国、EUなどの先進国や、
ロシア、インドなどからも、「核心人材」とよばれる
超一流の人材を積極的に中途採用してきました。
日本ではサムスンは、「技術者を一本釣り」するとか「技術を盗む」などと、
必ずしも評判はよくありませんが、
何も日本からだけ技術者をヘッドハンティングしているわけではないんですね。

「核心人材」について、
亜細亜大学特任教授の張相秀さんは、次のように語ります。
張さんは、元サムスン経済研究所専務で、
人事組織室長を務めた人事のスペシャリストです。

「過去二十数年間、驚異的な経営成果を築き上げることができたのは、
『核心人材』を確保し、育成してきたからです。
『核心人材』は、現在の問題解決はもちろん、持続的成長を達成し、
中長期経営戦略を実現するために不可欠な存在です」

核心人材とは、最高レベルの専門性と力量をもつ人材、
経営成果の創出に核心的な役割を果たす人材です。
サムスンは、「S(スーパー)級」「A(エース)級」「H(ハイ・ポテンシャル)級」
の3つのランクを区別して人材確保のプランを立てるなど、
中長期的な経営計画の実現に向けて、戦略的な人材獲得、
人材育成の仕組みを構築しています。「S級」の報酬は青天井で、
社長よりも多くの報酬をもらっている人も少なくないといわれています。

サムスンは、世界の一流企業と戦うために、超一流の人材を丸ごと獲得することで、
最先端の技術のキャッチアップを図るとともに、
技術開発の時間を大幅に短縮してきたわけですね。
しかし、だからといって、サムスンが一方的に非難されるべきではないでしょう。
というのは、技術の“後発国”のメーカーは、
日本も含めて、歴史的にたどってきた道ですからね。

「日本企業は、もっと外を見るべきですよ。
日本企業は、“サムスンが技術者を盗む”という非難を、
10年以上も続けていますよね。非難するより、その技術者たちはなぜ、
サムスンにいかざるを得なかったのかを考えるべきではないでしょうか。
内部の頭脳流出を防止し、全世界から優秀な人材を
迎え入れるべきではないかと思いますね」
と、張さんは語ります。

詳しくは、今月24日に文藝春秋から発売される、
張さんとの共著『サムスン・クライシス』をご一読ください。

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