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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

今春闘の賃上げは何を意味するか

今朝の新聞各紙で報道されていたことですが、
日産の2015年の春季労使交渉は、前年の月額3500円を上回る、
月額5000円のベースアップで決着する見通しです。
経営側は業績改善を受け、社員の士気向上を期待して、
高水準のベアに踏み切ったといわれています。

昨日のブログで書いたように、
トヨタはベア月額4000円とすることで事実上決着しています。
自動車大手2社がそろって高水準のベアを実施することで、
今年の春闘の賃上げ回答が高水準で推移し、
景気回復を後押しするのは間違いないとみられています。

賃上げといえば、もっと衝撃的な記事もありました。
インターネット証券大手の松井証券は、
約120人の正社員に対して、臨時賞与として平均100万円を支給します。
報道によると、松井証券は、毎年4月、業績に応じた通常の賞与を支給しています。
今回の臨時分を合わせると、正社員への支給額は平均200万円を超える見通しで、
年収は30%アップといいます。正直驚きですよね。

儲かったときに従業員に還元するのは
シンプルかつ当たり前のようでいて、じつはそれほど容易なことではありません。
というのは、日本企業には利益の内部留保を重視する傾向があるからです。

実際、景気による多少の変動はありますが、
企業の内部留保は90年の約112兆円から2000年は約172兆円、
2014年は332兆円と増え続けてきました。
もっとも、内部留保にはビジネスリスクに対する備えとしての役割がありますから、
一概にため込み過ぎということはいえません。
ただ、リスクを恐れるがあまり、慎重すぎたのも確かですわね。
まあ、リーマン・ショックで痛い目に遭ったトラウマも
一因としてあげることができるでしょうな。

今回の春闘で、大手企業が軒並みベースアップに踏み切っているのは、
賃上げによるコストアップに耐えられるだけの
余力がついてきたのはさることながら、
経営者がアグレッシブな姿勢を取るようになったことが大きいと思います。

実際、財務省と内閣府が今月12日に発表した
法人企業景気予測調査によれば、2014年度に稼いだ利益について、
大企業の約60%が「設備投資」に配分すると回答し、
約56%の「内部留保」を上回りました。
“失われた20年”の出口が見えつつある今日、
曲がりなりにも、経営者がリスクをとって
賃上げや設備投資、R&D投資などを決断し、
競争力を強化していくときがきた、と考え始めたということでしょうかね。

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