表紙を見たとたん、ハッとしましたよね。「そうきたか!」と……。
年3回程度不定期で発刊されるホンダの情報誌『Honda Magazine』の秋号が手元に届きました。
当然のことながらというか、表紙を飾る、ざらついた質感のモノクロ写真は、森山大道さんの作品そのものです。巻頭の特集は、『世界の森山大道×NSX』です。
森山大道さんといえば、すぐに代表作『三沢の犬』や、新宿の路上が浮かぶ人も多いでしょう。あらためて説明するまでもありませんが、「アレ・ブレ・ボケ」の作風で、世界的に高く評価される写真家です。1938年生まれですから、今年78歳になりますが、いまも精力的に活動を続けています。
私は、森山さんのファンを自任しています。一度、長野新幹線で同じ車両に乗り合わせたことがあります。軽井沢駅で停車中にホームに降りず、デッキから何枚もシャッターを切る姿を目撃したことがあります。例のごとく、彼が手にしていたのはリコーのコンパクトカメラのGRでした。印象的でしたね。
あの超最先端のスポーツカー「NSX」を、森山大道はどう撮ったのか。これはもう、8ページにわたって、森山作品がズラリですよね。
「NSX」は、以前このブログでも書きましたが、先月、日本で20年ぶりにフルモデルチェンジを経て発売された、2370万円のピッカピッカのスーパースポーツカーです。
二輪のマン島TTレースにはじまり、F1などモータースポーツ界を制してきたホンダの“矜持”といえるクルマです。
私は、「NSX」の実物を目の前にしたとき、迫力というか、魂というか、何かエネルギーのようなものを感じました。
この特集は成功といえると思いますね。いわば、つくり手の“矜持”まで写しとった写真だと感じました。しかも、すべて白黒写真ですが、美しい。艶っぽくさえあります。見ていて感動します。
森山さんは、「写真はぼくの総てであり、ぼくの全ては写真である」(森山大道著『写真との対話、そして写真から/写真へ』青弓社)と、書いています。
その森山さんと、ホンダが全霊を込めてつくった「NSX」の組み合わせは、チョー絶妙といえますよね。
思いましたよ。まあ、日本の自動車メーカーで、どんな形にしろ森山大道さんを起用できるのは、やっぱりホンダしかないでしょうな。