「ぜひ、部品だけは勝ち取ってほしいと政府にお願いしている」。日本自動車工業会会長の池史彦さんは、23日に開かれた自工会の定例記者会見の席上、そう語りました。
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉に参加する12か国の首席交渉官会合が24日から、米ハワイ・マウイ島で始まりました。加盟国に日本車や日本製の自動車部品にかけている関税を撤廃させ、輸出を増やせるかどうか。まさに正念場ですね。
自動車部品への関税は、日本側が0%なのに対して、米国は2・5%。理由の一つに、米国民主党政権の支持母体である自動車労組が自動車部品関税の即時撤廃に反発していることがありますね。「デトロイトスリーも日本から部品を買っており、彼らにも部品の関税撤廃はメリットがある」として、池さんは自動車部品分野の交渉の進展に期待を寄せます。
日本が米国に輸出する自動車部品は約400品目。部品関税撤廃は、すぐに全部ということにはならないまでも、大きい品目を中心にできるだけ対象範囲を広げていくことが期待されます。
これに対して、日本製自動車本体に課されている2・5%の関税はどうなるのか。
日本は2013年、参加国中もっとも遅く交渉に加わるにあたり、日本車にかける関税の撤廃時期をTPPの関税交渉の中でもっとも遅くするという不利な条件をのんだ経緯があります。「一番、後回しといわれて、さびしい思いをした」と池さんは、会見の席上、語りました。
完成車の関税撤廃については、撤廃までの期間が10年を超えるのが必須で、それ以上になる可能性もあります。例えば、20年とか。そのことについて、池さんは、仮に長期化しても関税率の水準から、日本車の輸出に「大きな影響はない」との見方を示しました。
池さんが「大きな影響はない」と語ったのは、日本の自動車メーカーはすでに現地生産を進め、需要のあるところで生産するのが大きな流れになっているからです。
とはいっても、将来的に完成車への輸入関税がゼロになれば、日本の自動車産業が有利になるでしょう。
また、他の交渉参加国での関税がなくなれば、日本からの輸出が活発化します。企業にとっては、輸出か現地生産化という事業の選択肢が増えることになりますから、歓迎すべきことでしょうね。