パナソニックは、中国・北京工場のリチウムイオン電池の生産を8月末で終了すると発表しました。なぜでしょうか。
リチウムイオン電池はもともと、旧三洋電機が得意としていました。子会社化後、パナソニックはリチウムイオン電池を重点事業と位置づけて、2015年度に1.5兆円の売り上げを見込んでいたんですね。
ところが、携帯電話やデジタルカメラ向けの民生用リチウムイオン電池は、サムスンSDI、LG電子など韓国勢との激しい競争に直面します。そこで、価格下落が続く民生用リチウムイオン電池の生産の中国シフト、材料調達からパックまでの一貫生産など、コスト競争力の強化に向けて、あらゆる手を打ってきました。
しかしながら、民生用は、思ったように収益をあげられないばかりか、需要そのものが縮小。とくに主力供給先のフューチャーフォンやデジタルカメラの需要減少に加えて、リチウムイオン電池そのものも低価格化が進みました。
こうなると、待っているのは消耗戦です。パナソニックは今年度中に生産子会社の清算手続きに入ることを決めました。早めに手を打ったということですね。
他方、車載向けなどの産業用は順調そのものです。つまり、今回の北京工場の生産終了は、勢いのある産業用を一層強化する狙いといえます。
「車載・産業へのシフトで成長性と収益性を確保していきます」と、2015年5月20日に開かれた事業方針説明会の席上、パナソニック・オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社社長の伊藤好生さんは語っていました。
リチウムイオン電池の業績は、14年度が売上高3794億円、営業利益74億円、営業利益率2.0%でした。15年度は売上高4060億円、営業利益227億円、営業利益率5.6%を見込んでいます。
パナソニックが今回、北京工場の生産終了を決めたのは、先細りの民生用を縮小し、車載分野に資源を集中、「稼ぐ力」をいっそう高めるための賢い決断といっていいでしょう。