「2025年問題」という言葉をご存じでしょうか。団塊の世代が2025年頃までに後期高齢者に達することで、介護、医療費など社会保障費の急増が懸念される問題なんですね。ただ、「2025年問題」は、企業にとっては、得意の技術を生かして新ビジネスを展開するチャンスでもあります。
内閣府の調査によると、「60%以上の国民が自宅で療養したい」と回答し、要介護状態になっても、「自宅や子供・親族の家での介護を希望する」人が4割を超えています。自宅での療養はむずかしいにしても、できれば住み慣れた地域で暮らしたいと考えるのは当然といっていいでしょうね。
政府もまた、「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。では、きたるべき「2025年問題」への備えとして、どうすれば、高齢者の地域での生活を支えることができるのか。在宅介護の負担をいかに減らせるのか。そのビジネスチャンスを虎視眈々と狙っているのが、家電メーカーです。
パナソニックは、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを実現するために、地域拠点型の「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」と「ショートステイ付き介護サービスセンターの展開、介護商品の開発を進めています。
例えば、サ高住事業については、パナホームが2000年以来、延べ1400棟以上の高齢者住宅を設計、建築しており、その実績とノウハウを生かすことができます。パナソニックは、18年度までに累計150拠点の開設を目指しており、そのうちパナホームは50拠点の建築を目標にしています。
また、介護商品の一例には、「高齢者施設向けみまもりシステム」があります。例えば、「生体センシングみまもりシステム」は、ベッド下に取り付けた非接触型電波センサーによって、ベット上の利用者の呼吸数や体の動きなどを検知し、離床行動などを介護ステーションなどに知らせるシステムです。夜間の体調の急変や徘徊などを早期に把握することにより、介護現場の負担を軽くすることができるといいます。
パナソニックは、高齢者人口が全人口の3割に達する2025年に向けて、介護事業の売上高2000億円の目標を掲げています。この数字をチャレンジャブルと見るべきなのか、どうなのか。
「これら介護機器を導入する拠点として、2018年度までに全国でショートステイ付き介護サービスセンターを200拠点、サービス付き高齢者向け住宅を150拠点展開していきます。つまり、2018年度750億円、2025年度2000億円の売り上げ目標を介護トータルで実現していくということです」と、パナソニックエコソリューションズ社エイジフリービジネスユニットの斉藤裕之さんは、記者発表の席上、語っていました。
折しも、安倍政権は、介護離職ゼロを目標にした“新第3の矢”を発表しました。パナソニックの介護事業は、240万人といわれる働きながら家族を介護している人たちにとって、少なからず助けになるのは確かだといえそうですよね。