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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

自動運転はここまできた!

今月8日に行われた、トヨタの自動運転車の公道におけるデモンストレーション走行で、実際に助手席に試乗しました。自動運転については、10年以上前から取材してきました。それだけに、その体験は、一言でいうと、感動でしょうか。今日は、そのときのことに触れてみたいと思います。
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※試乗した、レクサスGSを改造した「ハイウェイチームメイト」

自動運転については、トヨタとホンダは2020年をメドに高速道路での実用化、日産は16年にやはり高速道路での実用化をめざしています。
20年のオリンピック・パラリンピック開催をにらみ、安倍晋三政権も、法整備など後押ししています。一方、三菱総研は、ジャンクションを含めた高速道路での自動運転の実用化は、早くても25年と予測するなど、見方はさまざまですよね。

自動運転には、米国運輸省道路交通安全局が提言した5段階の分類があります。
まったく自動化がない状態をレベル0とし、レベル1が特定機能の自動化、レベル2が複合機能の自動化、レベル3が半自動運転、レベル4が完全自動運転です。
トヨタが20年に実用化を目指すのは、このうちレベル2を指します。ドライバーは安全運転の責任を持ちますが、操舵、制動、加速のすべてにおいて運転支援が行われる。今回は、それを体験しました。日本全国、デジタル地図さえあれば、自動走行が可能といいます。

ちなみに、レベル3は、機能限界になった場合のみ、ドライバーが自ら操作する。つまり、レベル2よりも、さらにドライバーが休めるイメージ。レベル4になると、操作も周辺の監視もすべて自動化し、子どもだけでも乗れるようなイメージです。

実際に自動運転を体験したのは、首都高湾岸線に有明入口から乗り、東に向かって、辰巳ジャンクションで9号深川線に分岐し、福住出口から降りるところまでです。

クルマは、「レクサスGS」をベースにした「ハイウェイチームメイト」。外観は、一般車と大きくは変わりません。従来の自動運転車の屋根には、クルクル回転するセンサーがついていましたが、小型化分散配置して、バンパーなど6か所にセンサーが埋め込まれています。屋根の上にアレがついていると、周囲に威圧感を与えてしまいますよね。
「周りの方に恐怖心を与えず、周囲に馴染むことも大切です」と、担当者は説明しました。こういう配慮は、実用化に向けて大切なポイントですね。

有明入口で料金所のゲートをくぐるとすぐに、ドライバーがステアリングホイールについているボタンを押し、自動運転に切り替えてハンドルから手を放しました。
「オートドライブモード」のアナウンスに続き、自動運転になったにもかかわらず「まもなく合流します。合流車両に注意してください」と音声が流れます。
「あれ?」と思いますよね。
このようなアナウンスについても、「自動運転時に運転手に何を伝えるかは、難しい問題です」と、担当者は語ります。確かに、いちいち報告されるのも気になりますが、クルマが何をしようとしているのかわからないと、運転手は不安ですよね。

スピードは70キロほどで走りました。カーブに差し掛かると自動的に60キロほどにダウンし、ハンドルはドライバーが手を動かしていないのに、自然とぐるぐると回ります。私は、このとき自動運転なるものを、初めて感動をもって実感しました。これなんだ、と。

車線変更では、ウインカー指示を出し、少しだけ減速して並走していたクルマを先にいかせたあと、同じくハンドルがするすると動き、車線変更が完了しました。並走していたクルマは、こちらのクルマが自動運転だとは、気付いてもいなかったはずです。
万事、スムーズでした。
トヨタをはじめ、自動車メーカーは、90年代から自動運転技術の開発を進めてきましたが、いや、再び「ここまできたか」と隔世の感を味わいましたね。
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※自動走行中のドライバーの様子

その後も、クルマは、カーブや車線変更をなめらかかつスムーズにこなし、目的地に無事到着。少しだけ減速して抜けるカーブなどは、プロのドライバー並みの運転テクニックですよ。

とはいえ、今回のデモは、信号や横断歩道がなく、歩行者もいない、高速道路というシンプルな交通環境においての自動運転です。非常に混雑した状態や、一般道での自動運転には、まだまだ多くの技術的な課題があります。

センサーやコンピュータの耐久性確保も課題です。さらに、高速を降りる際、自動運転の「終了の準備をしてください」とアナウンスがありましたが、いかに自動運転から手動運転に交代するかや、運転手に何を伝えるかなどの使い勝手も改良が必要ですね。

自動運転中であることを周囲に知らせるべきかどうかなど、実用化に向けた検討課題もある。
今回は、自動運転中は、リアウィンドウの上部が光るようになっていましたが、かりに周囲に知らせるとすれば、どんな方法をとるべきか。社会的コンセンサスを得ることも求められます。まだまだ、実用化への第一歩を踏み出したといったところでしょうか。

安倍さんは、自動運転技術を2020年までに実用化、普及させる方針です。「2020年の東京には自動運転車がきっと走り回っている」と強調していましたよね。
実際に試乗してみて感じましたが、2020年の実用化は、現実的と見ていいでしょう。
私は、いっそのこと、東京オリンピックでは、レクサスではなく、燃料電池車「ミライ」で自動運転を実現したらいいと思いましたよ。「ミライ」での自動運転は、技術的には、何ら問題ないと、トヨタの技術担当者は話していました。インパクトが強いのは、間違いありませんよ。

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