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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

食品メーカーが工場を新設する理由

このところ、食品業界において、国内工場新設のニュースを耳にしますよね。人口減少を背景に、国内の食品需要は縮小傾向にあるといわれますが、なぜ、なのでしょうか。単なる工場新設なのでしょうか。

山崎製パンは11月16日、兵庫県神戸市西区に200億円を投じて、新工場を建設することを発表しました。山崎製パンにとって、最終製品のパンの工場新設は、90年の愛知県安城市の工場開設以来、28年ぶりです。

崎陽軒は約15億円を投じて、横浜市内のシューマイ工場内に弁当工場を増設することを発表しました。工場増設によって弁当の生産能力を3割引き上げる計画なんですね。

食品業界の工場新設や増設には、総菜や弁当など調理済みの食品を自宅で食べる「中食」の需要が増えていることがあります。つまり、売上増への対応です。

では、なぜ、「中食」の売り上げが伸びているのか。一つは、外食からの切り替えですね。デフレの影響などから、外食の回数を減らして、テイクアウトの総菜や弁当を家庭で食べる機会が増えているんですね。

二つめの理由は、女性の社会進出です。働く女性が増えたことで、手作りの料理を自宅で食べる「内食」にかわって、「中食」が利用されていることがあげられます。

三つめが高齢化の進展です。コンビニエンスストアが、シニア向けの小分け総菜や健康をテーマにした低糖質のパンなどの品そろえを増やしていることからもわかるように、高齢社会の進展により、「中食」市場はますます拡大しているんですね。

とはいえ、食品メーカーの工場新設は、「中食」需要の拡大への対応だけでは語れないんですね。

山崎製パンの新工場では、省人、省力、省エネを追求した高効率な最新ラインを導入します。新工場は、関西地区の基幹工場と位置づけられ、効率的な生産体制、物流体制の構築拠点となります。

山崎製パンは、食パンのほか、菓子パン、サンドイッチ、洋菓子、和菓子など、たくさんの種類の商品をつくっています。例えば、山崎製パンの独自開発商品「ランチパック」には、ジャムやクリームをサンドしたものから、卵やハムが入ったものまで、常時全国で40品から50品あるんですね。

それらバラエティーに富んだ商品を、スーパーやコンビニの需要に合わせて、製造、納入するには、高効率な最新ラインが欠かせません。

製造業の現場では、変化の早い市場の要求に対応するために、IoT(モノのインターネット)を取り入れ、生産性を高める工夫が進められていますが、食品工場の現場も例外ではないということです。

現に、おもにセブン‐イレブン・ジャパン向けに総菜や弁当を供給する武蔵野の工場では、ロボットの活用が進められています。2014年に稼働した武蔵野の埼玉工場では、ロボットができあがった弁当やおにぎりをベルトコンベアから搬送用ケースに移す作業などをこなしています。

武蔵野の埼玉工場では、従業員1500人のうち、7割を外国人が占めますが、それでも、人手不足は深刻です。ロボットの活用は、人手不足への対応からも欠かせないんですね。

このほか、食品工場には、食の安全・安心の高まりを背景に徹底した衛生管理や温度管理などが求められるようになっています。

従来型の工場では、こうした市場の要求に応えるのがむずかしいとなれば、工場を新しくする必要があります。食品メーカーがこぞって工場新設や最新ライン構築に取り組む背景には、将来を見据えたチャレンジがあるといえるでしょう。

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