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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ゴーンさんはなぜ日産社長を辞めるのか

やっぱり、そうだったのか……と思いました。カルロス・ゴーンさんの日産自動車の社長兼CEO退任のニュースです。


※カルロス・ゴーンさん

というのは、今年1月の日本経済新聞「私の履歴書」の連載最終回で、ゴーンさんは次のように書いていた。少し長いが引用してみましょう。

「次はどんな人物が日産の経営を担うのか? 私がするのは、候補者にどんな資質が必要かを説明することだ。具体的に誰にするかを決めるのは取締役会である。ただ。選ばれる人はもちろん、変革に対応でき、成長を持続させられる人だろう。

では、私が日産を卒業したら、何をするか? 色々考えている。」

これを読んだとき、もしかしたら……と思ったんですよね。

さて、ゴーンさんが日産のリーダーとして選んだのは、現在ゴーンさんと共同CEOを務める現副会長兼CEOの西川廣人さんです。日産の社長交代は、約17年ぶりです。このトップ人事は妥当なところですよね。というのは、昨年、西川さんにゴーンさんと並んで共同CEOの肩書がついた時点から予測されていましたからね。

※西川廣人さん

では、なぜ、このタイミングでゴーンさんは日産CEOを辞めるのか。
三菱自動車の会長を務めることと無関係ではないでしょう。ゴーンさんの肩書は、これまで、日産の社長兼会長兼CEO、ルノー会長兼CEO、三菱自動車会長、さらに、ルノー・日産アライアンスの会長とCEOでした。いくらなんでも肩書が多すぎた。

むろん、日産の業績がよいこと、それから、昨年末から今年にかけて「セレナ」「ノートe-POWER」とヒット車が出てきたことも一つでしょう。

それよりなにより、ルノー日産アライアンスは、三菱自動車を傘下に入れたことで、念願の世界販売台数“1000万台クラブ”に近付き、トヨタ、VW、GMに続いて世界のトップグループに入ったことでしょうね。

ゴーンさんは今後、日産社長兼CEOを離れますが、代表権のある取締役会長であり、今後もマネジメントに深く携わることは間違いない。「私は引き続き日産の取締役会長として、またルノー・日産・三菱自動車のアライアンスの枠組みの中で、監督・指導を行っていきます」とコメントを発表しています。

ルノー・日産アライアンスとは、いわば、ホールディングスのようなものです。ゴーンさんは、これまで通り、そのアライアンスのCEOとしてトップを務めます。
“ホールディングス”のなかには、ルノーと、日産と、三菱自動車があり、ゴーンさんと、西川さん、そして益子修さんがそれぞれのCEOを務める形になります。

ゴーンさんは、ルノーCEOと、それぞれの会社の会長は務めますが、日産、三菱自動車のCEOではない。それぞれの会社の責任はそれぞれのCEOが持ちながら、アライアンス全体の舵取りはゴーンさんが担うと考えていいでしょう。

ゴーンさんのパワーは薄れるのかと思いきや、むしろシンプルになってしっかりと力を発揮できるのではないかとさえ考えられます。

私は、昨年末に発売された『日経ビジネス』(2016年12月19日号)の特集「次代を創る100人」のなかで、カルロス・ゴーンさんについて書きました。そのなかでも触れた通り、ゴーンさんは、「即断即決即実行のキレを備え、変化や危機が訪れると奮い立つ。劇的変化の絶えない、今日のような“乱世”に強いリーダー」です。

ゴーンさんは、約18年間にわたり、トップとして日産を立て直し、世界に類を見ないアライアンスを成功させるなど偉大な功績を残した。

これからも、ルノー・日産・三菱アライアンスファミリーの進化を求めて、あと、少なくとも数年は走り続けるのではないでしょうか。

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