キヤノンは27日、社長兼最高執行責任者(COO)に真栄田雅也専務が昇格すると発表しました。御手洗冨士夫さんは、引き続き、代表権のある会長とCEOを務めます。
「社長には、開発、生産、販売といった事業強化を見てもらいます。私は人事、対外折衝、海外営業など管理部門を重点的に見ていきます」
御手洗さんは、都内で開かれた記者会見の席上、新体制について、そのように述べました。
真栄田さんは、主力のカメラ事業に長く携わり、2007年にイメージコミュニケーション事業本部長に就任。後発のデジタルカメラを世界首位に押し上げました。御手洗さんは、「イノベーター」と真栄田さんを評しています。
キヤノンといえば、御手洗さんのカリスマ性を抜きに語ることはできませんよね。その御手洗さんが誰を後継者に指名するかについては、かねてから注目が集まっていました。
御手洗さんは、もともと創業者の血を引いています。1995年に社長就任後、事業部の壁を打ち破り、キヤノンを高収益企業に成長させました。決断と実行の人といっていいでしょう。
また、現場とのコミュニケーション力にも長けています。御手洗さんの号令一下、国内外の54工場でベルトコンベアが外され、わずか4年で全工場にセル方式が導入されたのは、熱意と執念の賜物といえるでしょう。
超円高でも、雇用を守るために国内のデジタルカメラ生産工場を自動化したことや、実力主義に基づく終身雇用を掲げたことでも知られます。信念の人ですわね。
しかしながら、御手洗さんが強いカリスマ性をもてばもつほど、逆に後継者が育たないというジレンマがあります。
それを象徴するのが、異例の社長復帰です。御手洗さんは95年に社長に就任、06年に経団連会長に就いたため、社長を退いて会長になりました。ところが、10年に経団連会長を退任後、12年3月にキヤノンの社長に復帰したんですね。
当時、御手洗さんは76歳でしたが、欧州債務危機や歴史的円高でキヤノンの業績は低迷していました。御手洗さんは、「私が社長をやらなければ」と考えたに違いありません。
御手洗さん自身、後継者の育成が容易でないことはわかっていたのだと思います。だからこそ、自ら塾長となり、経営幹部育成機関「経営塾」を設立しています。
じつは、御手洗さんが次期社長に指名した真栄田さんは、「経営塾」の2期生です。
「経営塾の出身者であることを嬉しく思っています」
と、御手洗さんは記者会見の席上、語りました。
御手洗さんは引き続き、会長兼CEOとして、経営全体の指揮を執り続けます。デジカメ事業の頭打ちなど、キヤノンを取り巻く経営環境は厳しい状況にあります。結論的にいえば、御手洗さんでなければ、難局を乗り切れないということになるでしょうかね。