電気自動車(EV)をめぐって、日本なかんずくトヨタは遅れているのではないかといわれています。果たしてそうでしょうか。
※トヨタ常務理事の安部静生氏
20年にトヨタブランドの電気自動車(EV)を中国に投入すると発表するなど、トヨタは対応を急いでいますが、出遅れ感があるとか、いやいや遅れてはいないなど、トヨタのEV開発では意見が分かれていますよね。
折から、トヨタ自動車は27日と28日の両日、「車両電動化技術」に関する説明会を東京都内で開きました。会場には、初代「プリウス」から20年かけて蓄積されてきた、モーターやバッテリー、PCU(パワーコントロールユニット)などが、世代ごとに展示されていました。
指摘するまでもなく、19年に中国で導入されるNEV規制などを受けて、世界では「EVシフト」の流れがとまりません。
パワートレーンカンパニー常務理事の安部静生氏は、次のように語りました。
「車の電動化のコア技術は、モーター、バッテリー、PCUです。これらの技術があれば、さまざまなタイプの電動車をつくることができます。これらのユニットを共通化することで、今後の電動化でも優位性を保つことができます」
つまり、トヨタは、モーター、バッテリー、PCUといったコア技術の技術開発と製造を「手の内化」していることで、これからもコスト競争力や高品質を確保できるということなんですね。自信たっぷりでした。
例えば、初代「プリウス」から現行の4代目「プリウス」までに、ハイブリッドシステムのコストは、約4分の1に低下しています。また、モーターは約3倍の高回転化を実現するとともに、装置は約3割軽量化しています。
実際に、歴代「プリウス」のステーターが展示されていましたが、巻き方を変えることによって、小型化、軽量化を実現すると同時に、最高回転数を上げているんですね。
「手の内化」すれば、トヨタの内部にはノウハウが蓄積されます。外部に委託するよりも欲しいものをより早く生産できるというメリットもあります。条件によっては確かにコスト削減にもつながる可能性が出てきますね。
それは、これからもトヨタの大きな強みであり続けることは否定しませんが、自動車産業が100年に1度の変革期を迎えるなかにあって、果たして「手の内化」が強みであり続けるかとなると、どうでしょうか……。
自分たちが保有する技術だけで製品化を進めてしまっては、世の中のニーズから離れてしまう恐れが出てこないとも限らないからですね。
問題は、HVの延長線上にない電池ですね。
この点でいえば、トヨタは現在、大容量でEV向け次世代電池とされる「全固体電池」を東京工業大学と共同開発しています。20年代前半の実用化を目ざしているんですね。
それから、この9月、トヨタはEVの基幹技術を開発するために、マツダやデンソーと合弁会社「EVシー・エー・スピリット」を設立しました。EV開発に本腰を入れるサインですよね。
ただし、一番肝心なのは、EV開発のスピードアップです。ややもすると、トヨタは慎重にコトを進めます。
求められるのは、速度違反を覚悟で商品を早く市場に出すことです。