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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ソニーやパナソニックは“何の会社か”

やや旧聞に値しますが、年初、米ラスベガスでCESが開催されましたよね。主役はAIやロボット、自動車関連で、CES自体、もはや「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(家電見本市)」とは呼べないほど、家電の存在感は薄いんですね。

そのなかで、複数のメディアが取り上げていて気になったのが、パナソニック社長の津賀一宏さんのコメントです。記者から、「パナソニックは何の会社か」と問われて、「正直、私自身自問自答している」と答えたのだ。


※パナソニック社長の津賀一宏さん(2017年10月撮影)

さもありなん。津賀さんは、12年、大赤字のなか社長に就任し、B2Bビジネスに大きく舵を切り、V字回復を達成しました。今後の成長においてもB2Bの果たす役割は大きい。一方で、創業者の松下幸之助が起こした祖業はB2Cの「家電」です。現状、何の会社かと問われて、「部品です」とも「家電です」とも、いえるはずはありません。

ただ、このコメントを読んで、私は、ソニー社長の平井一夫さんのコメントを思い出しました。平井さんは、昨年5月の経営方針説明会の席上、記者に、「ソニーは何会社だと思いますか」と問われて、「一言で申しますと、ソニーは感動会社です」と即答した。


※ソニー社長の平井一夫さん(2017年5月撮影)

以下、平井さんのコメントを引用します。
「ソニーピクチャーズであれば映像コンテンツを通して感動を投入するし、ソニー生命でいえば、生命保険の新しい提供の仕方をずっと考えてやってきた中で感動をお届けしていますし、エレクトロニクスはハードによって感動をお届けするということで、やはり感動をお届けする会社だということが、いちばんの上位概念であるのではないかと考えています」

平井さんは、12年に社長に就任した当初から、ソニーのミッションは、「感動をもたらし、人々の好奇心を刺激し続ける会社であり続けること」といっています。これは、ソニーが多角化し、収益を悪化させて迷走した時代、ハードとソフトの融合だとか、「ワン・ソニー」だといって、会社をまとめるのに苦闘し、「何の会社なのか」を自問自答し続けてきたからこそ出た結論だと思います。

「感動会社」とは、ややムリヤリ感はあります。しかし、ソニー全体が何の会社かといったとき、ハードウェアメーカーとはいい切れないし、保険会社や音楽の会社だともいえない。あえて共通項をあげるなら「感動」をつくっているというのは、わかりやすい話ではあります。

いま、産業構造が大きく変化するなかで、自動車メーカーや電機メーカー、ハード、ソフト、サービスなどあらゆる垣根が取り払われ、自らが何の会社なのか、見失いそうな企業は多いのではないでしょうか。何の企業でもいい。業態が変わってもいい。生き残るために大切なのは、市場の変化に合わせて、自らどのようにも「変化できる力」を内包する会社であることではないでしょうかね。

もっとも、津賀さんは、「パナソニックは、人をつくる会社です」というべきだったのではなかろうかと、思わないでもありませんがね。いやいや、それは幸之助がいっていたのだから二番煎じですわね。やっぱり、「自問自答している」というのは、正直なところなんでしょうね。

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