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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

初の1000万台を達成したゴーン氏はやめるわけがない

カルロス・ゴーンさんが仏ルノー最高経営責任者(CEO)を退任するとの観測が浮上しています。


※カルロス・ゴーンさん

かりに、ルノーのCEOを退任する場合でも、ゴーンさんはなんらかの役職にとどまり、ルノー日産三菱連合を統括するのか、しないのか――。去就が注目されるのは、ルノー日産三菱ファミリーが真価を発揮するのは、いよいよこれからだからです。

ルノー日産三菱連合は30日、2017年の世界販売が6.5%増の1060万台となり、はじめて1000万台を突破したと発表しました。

世界首位の独フォルクスワーゲンにはあと一歩、及ばなかったものの、1038万台のトヨタ自動車を上回り、2位に浮上しました。

何が、ルノー日産三菱連合を躍進させたのか。ズバリ、3社が国や地域別にそれぞれ強みを持ち、役割分担がうまくいったことが大きいといえますね。

日産は、米国と中国で、人気のスポーツ用多目的車(SUV)が販売を伸ばし、米国と欧州、中国でそれぞれ、過去最高の販売台数を記録しました。

ルノーは、欧州をはじめ、アフリカや中東、インドなど幅広い地域で販売を伸ばしました。

そして、三菱自動車は、得意のSUVの販売が東南アジアや中国で好調でした。

振り返ってみれば、ゴーンさんが2017年4月、日産トップの座を西川廣人氏に委譲し、代表権のある会長に就任したのは、ルノー日産三菱連合の経営に専念するためでした。

「アライアンスの戦略面および事業上の進化により多くの時間と労力をかけ、アライアンスのもつ規模による競争優位性をパートナー各社に享受させることができる」
と、ゴーンさんは述べ、アライアンスに注力する考えを示しました。

ゴーンさんは17年9月、「目標ではない」としながらも、2022年に3社連合で年1400万台を販売する計画を明らかにしました。その狙いは、規模の拡大によって、コスト削減を優位に進め、利益を伸ばすことにあります。

ルノー日産三菱連合は、すでに車台の共通化などによるコスト削減などを進めていますが、販売台数が伸びれば伸びるほど、3社による相乗効果が期待でき、利益を押し上げる展開になるのは間違いありません。

ルノー日産三菱連合が今後、順調に販売台数を伸ばせば、いよいよ本格的な相乗効果を発揮する段階となり、ゴーンさんの狙いは現実のものとなるわけですね。

ただし、課題がないとはいえません。本来、3社連合の中で、もっとも販売台数が多い日産の国内販売が依然として課題を抱えているんですね。足元をしっかり固めるべきところ、不正事件の影響もあって、日産の国内販売は思うように伸びていない。

ご存じのように、日産は昨年9月、資格のない従業員に完成車両の検査をさせていた問題が発覚し、国内生産の一時停止を余儀なくされ、新車の販売が落ちこみました。16年度の日産の国内販売台数は前年比2.6%減の55万7000台で、国内5位に甘んじています。

これでは、3社連合の“兄貴分”として、世界販売全体を押し上げる役目は果たせそうもありませんよね。

また、かねてから指摘されていることですが、日産は世界販売の4割近くを占める北米市場において、インセンティブといわれる販売奨励金の積み増しから収益が悪化しています。

果たして、ルノー日産三菱連合は、ゴーンさんの狙い通り、規模の拡大を利益につなげ、「世界一の自動車メーカー」になれるのか。ここは、ゴーンさんに3社連合を引っ張ってもらうしかありません。ルノーのCEOをやめても、3社連合のトップを辞める選択はないんですね。

フランス紙フィガロによると、ルノー経営陣は、すでにゴーン氏続投の意思を固め、仏政府など大株主の合意を得たということです。ゴーンさんは続投することになるのか。

ゴーンさんが、ルノー日産三菱ファミリーを牽引する体制が続くのは、間違いないでしょう。

 

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