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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

日産の電動化戦略の意気ごみ

日産は、23日、電動化、自動運転技術、コネクティビティに関する計画を発表しました。昨年4月から、中期計画「M. O. V. E to 2022」の6カ年計画を進めていますが、その一環として、これらの技術の拡充や進展について説明したんですね。

まず、電動車についてです。2022年度までに年間100万台の電動車を販売する計画です。EV(電気自動車)に加え、エンジンで発電してモーターで走るハイブリッド技術の「e-POWER」搭載車を含みます。

日産は、EVについては、2010年以来、世界で30万台以上の「リーフ」を販売してきた実績があり、技術やデーターの蓄積があるのは間違いないでしょう。

一方で、ハイブリッド技術は、トヨタに一日の長があります。トヨタの2017年の電動車の販売台数は152万700台で、全体の約15%です。トヨタは、2030年に、EV、PHV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)、HV(ハイブリッド車)を合わせて、全体の約半数にあたる550万台の電動車を販売する計画なんですね。


※CPLOのフィリップ・クランさん

商品戦略を担当するCPLO(チーフ・プランニング・オフィサー)のフィリップ・クランさんは、会見の席上、次のようにコメントしました。
「電動化はそれぞれの国によって進捗状況が変わります。たとえば日本と欧州はいちばんはやく電動化が進むと考えております。前提としては、2022年に日欧で総販売台数の4割、25年には5割以上が電動化車両になると考えています。一方、アメリカ市場はちょっとスピードが緩いかもしれません。2025年には2割か3割、中国はその中間で3・5~4割が電動化車両になるという見込みです」

ちなみにクランさんは、PHVやFCVについて、記者の質問に答え、「主流になる技術は、お客さまに対してバランスのとれた価値とコストを実現できる技術である」としたうえで、「PHVは、非常に複雑な技術でコストが高い」、FCVについては「興味深い技術だが、将来のために興味深いのであって、現代ではない。コストが、とても商販できる水準にはなっていない」とコメントしました。技術の研究開発は進めつつも、普及にはまだ時間がかかると考えているんですね。

自動運転技術については、日産は自動運転技術「プロパイロット」(レベル2)を、国内では「セレナ」「エクストレイル」「リーフ」に搭載しているほか、米国でも一部車種に搭載しています。これを2022年までに20車種に搭載し、20の市場に投入する計画です。22年までに、プロパイロット搭載車の販売台数は年間100万台になると見込んでいる。技術的な進化も進めます。

「いまの開発レベルは、高度自動運転というところにきておりまして、次にはさらにSAEのレベル4からレベル5というところが次の目標になります」
日産研究・先行技術開発担当のSVPの浅見孝雄さんは、そう説明しました。

コネクティビティについては、2022年までに、インフィニティ、日産、ダットサンブランドの全新型車種にコネクティビティ機能を搭載し、「アライアンスコネクテッドクラウド」につなげます。これによって、無人運転車や配送サービスなどを目指すんですね。先だって、横浜で行った「イージーライド」などです。2020年代早期に本格サービスを展開したい考えです。

いま、世界の自動車に関する競争は凄まじいものがあります。例えばどの技術を内製し、どの技術を外部に頼むのか。新しいサービスを始めるパートナーに誰を選ぶのか。また、各技術への投資配分はどうするのか。各社各様の戦略があり、戦略次第では、10年後、20年後の業界の地図が大きく変わりかねない状況です。

日産は、技術面では、ルノー・日産・三菱自動車アライアンスのリーダー格です。技術と同時に、世界の自動車市場で生き残っていくためには、スケールメリットや人材などのアライアンスの効果を最大限に利用することが不可欠なのは、間違いありません。

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