クルマを売って稼いできた自動車メーカーも、もはやカーシェアリングを無視するわけにはいかなくなりました。日産は、“クルマを持たない世代”を取り込もうと動き出しています。
※日産専務執行役員の星野朝子氏
日産自動車は20日、2022年度末までに国内で新型の電気自動車(EV)を新たに3車種、eパワー搭載車を5車種投入すると発表しました。
22年度までに国内販売台数の4割、25年度までに半分以上を電動駆動車にする計画です。
狙いは、電動車の投入を加速し、台数増につなげることです。ただし、これまでのようにクルマを買ってもらえるとは限りません。
かつては、クルマを「所有」することはあこがれであり、豊かさの象徴でした。ところが、そうした価値観は崩れ始めています。
そもそも、クルマは1日のうち、多くの時間は利用されていない。それだったら、必要なときに借りて使えばいいじゃないか。会員同士でシェアすればいいじゃないかという考え方が出てきました。
とりわけ、若い人たちは、“コスパ”といって、コストパフォーマンスを意識します。低い費用で高い効果を手にしたいと考えています。
日産は、ここに着目したんですね。2018年1月、カーシェアリングサービス「eシェアモビ」を首都圏でスタートさせました。「eシェアモビ」の名の通り、借りられるのは、新型日産「リーフ」と「ノートeパワー」です。
利用者にとって、カーシェアリングの最大のメリットは、コストです。利用料金には、ガソリン代や保険料など、本来、維持費として支払うコストが含まれています。もちろん、月々の駐車料金、車検代の支払いも気にしなくていい。
しかも、基本的に15分単位での利用が可能なため、短時間の利用であれば、レンタカーより安くすみます。
ところが、「eシェアモビ」をスタートさせてみると、意外なことが判明しました。
「カーシェアは、15分単位で金額が決められているため、短時間借りたい人が利用するのだと思っていました。ところが、実際は2泊3日で利用する人もいるんですね。どうやら、深夜に借りて、深夜に返せる利便性、免許証をかざせば解錠される簡便さに心地よさを感じてもらっているようなんですね」と、日産専務執行役員の星野朝子氏は、4月20日に開かれた「日本事業中期計画」の説明会の席上、語りました。
カーシェアリングは、入会手続きさえしてしまえば、レンタカーのように、窓口で書類に記入するなどの面倒な手続きは必要ありません。乗りたいときに、Webサイトやモバイルサイトから予約すれば、すぐに利用できます。
「eシェアモビ」の場合、無人のカーステーションで免許証をかざしてキーを解除すれば、すぐに乗れる。利用後は、ステーションに返すだけです。
つまり、24時間、好きなときに手軽に利用できる。どうやら、若い世代はここに魅力を感じているようなんですね。
日産は、18年度末までに「eシェアモビ」のステーションを、現在の30拠点から500拠点に増やす計画です。
若い世代は、クルマを生活を楽しく便利にするためのツールとしてとらえています。自由に軽やかにクルマのある生活を楽しんでいます。
クルマを持つことがステータスだと考え、クルマにことさらに“重い意味”を持たせようとする、これまでの考え方に辟易しているようにさえ見えます。
カーシェアリングが広がれば、新車販売への影響が出てこないとは限りません。しかし、それ以上に大切なのは、ユーザーの意識の変化に向き合うことです。
日産は、カーシェアリングサービスを国内事業の収益強化につなげる計画です。