日本は、2000年に介護保険を導入、国内の介護市場は10兆円にのぼります。2025年には団塊の世代が後期高齢者になることから、市場は一段と大きくなります。
パナソニックは、きたるべき超高齢化社会に向けて、介護事業に本格的に乗り出す計画です。
10兆円といえば、コンビニエンスストアの国内市場と同等の規模です。しかも、市場規模はさらに拡大することから、日本では数少ない成長産業といえます。
パナは2月1日、介護サービスの提供や介護用品の開発、販売など、介護関連事業を展開するグループ4社を統合し、パナソニックエイジフリーを設立すると発表しました。
パナがグループ4社を統合したのは、成長産業である介護事業に本格的に乗り出す意思表示であることは間違いありません。ただし、4社統合の狙いは、事業規模を大きくすることだけではないんですね。
国は、介護施設の入所者3人に対し介護職員1人という配置基準を設けています。ところが、この基準でシフトを組むと人手が足りず、夜勤は2人体制にならざるを得ないなど、職員の負担は重いといいます。
現場の負担を少しでも軽減するには、介護ロボットやIT機器は欠かせない存在です。センサーを入居者につけてもらえば、脈拍や血圧などの異常を検知したときに職員が駆けつけることができ、夜間の巡回を効率化できます。ベットから車椅子に乗り移る際に、介助ロボットを使えば、介助する人の負担を減らせます。排泄介護に、排泄ケアロボットの力を借りれば、介護する人、される人、どちらの負担も軽くできます。
ところが、聞くところによると、ロボットやITは介護の現場で十分に活用されていないようなんですね。介護施設に導入されたロボットやIT機器が、操作が不慣れなことや片づけのわずらわしさから、半年もしないうちに埃をかぶっていることも少なくないといいます。
介護の現場ではほかにも、介護する人、介護される人、双方のニーズを満たしていない製品が多くありそうです。製品を開発する側と使う側のマッチングが十分とはいえないんですね。
パナがグループ4社を統合した意味はここにあります。つまり、製品開発とサービスを提供する組織を一つにして、介護の現場の声を製品の企画や開発に活かそうという狙いです。
パナは、1998年に大阪府で初めて介護付有料老人ホームを開設し、2014年にはサービス付高齢者向け住宅事業を開始しました。2018年度までに全国でショートステイ付介護サービス施設を200拠点、サービス付高齢者向け住宅を150拠点展開する計画です。
18年にわたって全国規模で介護サービスの提供を行ってきた経験が、介護機器やサービスを開発するうえでの土台になります。介護する人、介護される人、双方から得られる情報は、宝の山です。
パナは、介護関連の製品をつくるメーカーであると同時に、介護サービス事業者でもあります。相乗効果によって、介護事業関連の売上高を18年度に750億円、25年度には2000億円規模に拡大する計画です。
パナが、超高齢社会における介護関連の製品開発から介護サービス施設の運営までの一貫したビジネスモデルの構築を狙っているのは、間違いないでしょう。