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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

「つながるクルマ」、トヨタの本気度は?

トヨタは「つながるクルマ」、すなわち常時インターネットに接続されたコネクティッドカーに本腰を入れます。この分野は、世界中で自動車メーカーやIT企業が取り組み始めています。次世代車をめぐる激しい闘いの最前線なんですね。

26日、トヨタは、「クラウン」と「カローラ」のハッチバックの新型を同時に発表しました。「クラウン」は、いわずと知れた、トヨタの国内高級セダンです。1955年、初の純国産車としてデビューした歴史をもちます。一方の大衆車「カローラ」は、1966年以来、150の国と地域で累計4600万台を売り上げる世界戦略車です。


※新型「クラウン」

いずれもトヨタを代表するクルマです。高級車と大衆車の両方を一度に、しかも「本格コネクティッドカー」と大々的に打ち出して発売することには、コネクティッドカーの本格普及をねらうトヨタの本気が表れています。

イベントは、「コネクティッドデイ」と銘打ち、一般の招待客を迎えて社長の豊田章男さん自身が登壇して説明を行いました。全国7拠点を〝コネクト〟し、メイン会場の様子を中継するという力の入れようだったんですね。

章男さんは、「クルマには、走る、曲がる、止まるだけでなく、『つながる』という新しい性能が求められている」と、強調しました。


※新型「カローラ」

新型「クラウン」と「カローラ」は、車載通信機「DCM」を、全車標準搭載しています。ドライバーとクルマ、町が相互につながり、より安全、安心、快適、便利な社会を目指すといいます。具体的には、何ができるようになるのでしょうか。

例えば、事故を起こしてエアバッグが作動し、コールセンターからの連絡にドライバーが応答しない場合、緊急車両を自動手配してくれます。また、車両情報はつねにトヨタのセンターに送信され、点検時期などメンテナンスに関する通知を受け取れます。

また、音声操作によって、人工知能(AI)が、近隣の飲食店などを探してくれるほか、ニュースや天気予報も教えてくれます。さらに、無料通信アプリの「LINE」で、自分のクルマを友達に登録すれば、LINEの画面上でクルマと会話できます。「○○にいきたい」と送信すると、クルマが「往復××km、給油なしで往復できそうです」などと答えてくれる。「目的地登録しておいて」と頼めば、自動で目的地を設定してくれる……といった具合です。

このほか、ドアロックの閉め忘れがスマホに通知され、スマホからドアロックを遠隔操作する機能や、走行情報に基づく安全運転度合いによって、自動車保険料の割引サービスなどもあります。

トヨタのコネクティッドカーの最大のウリは、24時間365日稼働のコールセンターでしょう。警告や故障、きめ細かい対応など、必要に応じてオペレーターが音声で対応する。「人とつながる」安心感を訴求します。そのために、販売店向けのトレーニング用の研修施設のほか、オペレーターの訓練施設も増強する。トヨタ副社長で、トヨタコネクティッド社長の友山茂樹さんは、「トヨタは、本気なんです」と、強調しました。

トヨタは、2020年までに、日米で販売するほぼすべてのクルマをコネクティッドカーにすると宣言しています。いずれ、トヨタ車はみんなコネクティッドカーになる。

ただ、新型「カローラ」「クラウン」に搭載したような、トヨタの提供するコネクティッドの機能が、消費者からどう評価されるかは、まだわかりません。

「クラウン」も「カローラ」も、顧客の高齢化が課題の一つで、トヨタは、コネクティッドカーによって新たなクルマの魅力を提示し、若年層を取り込むねらいです。しかし、思惑通り、いくかどうか。

例えば、米GMのコネクティッドカーは、車内からレストランの予約やファストフードの注文をし、ドライブスルーですぐに受け取ることなどが可能です。独メルセデスベンツやBMWもコネクティッドカーに力を入れていますし、アップルやグーグルなどは、スマホと車載システムを連携し、個人の好みにあったアプリを社内で使えるような取り組みに注力しています。IT企業と自動車メーカーとの提携は、世界中で進んでいる。

トヨタは、コネクティッドカーの機能充実のため、「トヨタネクスト」として、新しいサービスをつくるためのオープンイノベーションの場も設けています。今後は、いかに顧客の役に立ち、顧客が喜ぶ機能を描いて、実際に搭載するかという競争です。

新しい試みはなんでもそうですが、普及するためのポイントの一つは価格です。高級車の「クラウン」は460万円台から、「カローラ」は213万円台からです。サービス料は、最初の3年間は無料で、4年目から年1万2000円から1万6000円。コネクティッドによる価値に、顧客はどこまでの魅力を感じ、対価を支払うのか。

このたび、トヨタは高級車、大衆車からコネクティッドカーをスタートしましたが、その先には、「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」があります。1月の米CESで発表した「e-Palette」のコンセプトは、コネクティッドなしには実現しない。カーシェアやライドシェアもまた、コネクティッドが欠かせません。

トヨタは、トヨタ生産方式のジャストインタイムを、生産ラインにとどまらず、一人ひとりの顧客にまでつなげる、「ジャストインタイムサービス」を標榜しています。そのための一歩を、踏み出したということです。

新型「クラウン」「カローラ」は、トヨタが「100年に一度の大変革期」をリードしていけるかどうかの試金石ともいえそうです。

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