トヨタは好調な決算となったにもかかわらず、「稼ぐ力は道半ば」と危機感を打ち出しました。なぜか。自動車会社からモビリティ会社への大変革に加えて、米政権が検討する自動車関税の影響など、先行きが不透明だからです。
※トヨタ専務役員の白柳正義氏
トヨタ自動車は3日、2018年4~6月期の連結決算内容を発表しました。売上高は前年同期比4%増の7兆3627億円、純利益が同7%増の6573億円、営業利益が同19%増の6826億円でした。
利益の押し上げ要因は、北米とアジアで販売が好調だったことのほか、〝お家芸〟の原価改善努力や営業面の努力、諸経費の削減などでコストダウンが進んだことです。
にもかかわらず、専務役員の白柳正義氏は、「稼ぐ力や原価低減の力を引き上げる取り組みを始めてきて、少しずつ成果は見え始めているが、まだまだ道半ば」と評価したんですね。
たしかに、自動車産業の100年に一度の大転換期を乗り切るために、研究開発費用が増えています。それを補うために、トヨタはこれまで以上に、「稼ぐ力」をつける必要がありますが、それだけではありません。
米政権が検討している自動車の追加関税の影響も見ていかなければならない。したがって、2019年3月期の業績見通しは、据え置きました。
かりにも、追加関税が発動された場合の影響は、「非常に大きい」として、白柳氏は次のように語りました。
「日本からの輸出車で、一台当たりの負担増は平均6000ドル程度になります」
実際、トヨタは日本から米国にSUV(多目的スポーツ車)「RAV4」など約70万台を輸出しており、高関税が発動されれば、年間4700万円の負担増になる見込みなんですね。
コスト増をカバーするには、「稼ぐ力」をさらに高めていかなければいけない。そこで、トヨタは、従来の原価低減に加えて、さらに徹底的な固定費の削減に取り組む計画なんですね。
米国発の保護貿易主義で影響を受けるのは、トヨタだけではありません。日本の自動車メーカーが17年に国内で生産した968万台のうち、173万台が米国向けに輸出されました。
米国が自動車に高関税を導入するようなことがあれば、日本にとって最悪の事態を招きかねません。その影響は、自動車産業だけでなく、広く他産業にも広がっていくことは容易に想像できます。
トヨタが「まだまだ道半ば」として、さらなる原価低減を進めるのは、そうした非常事態に対して、万全の備えをしようとしているからにほかなりません。
トランプ政権が引き起こした貿易戦争が、日本の自動車メーカーにも暗い影を落としています。