「マツダはEVをやらないのか」「エンジンはこれからどうなるのか」――。世界の自動車メーカーがいっせいにEVに舵をきるなか、マツダの動きが注目されます。10月2日に開かれた「技術説明会2018」で、マツダは「EV」に対する答えを出したんですね。マツダらしい、じつに独創的な「EV」です。
※ マツダの丸本明社長兼CEO
やはり、マツダの考える「EV」は違う。最大の特徴は、ロータリーエンジンをパワーソースにしていることです。
マツダといえば、ロータリーエンジンです。しかし、2012年の「RX‐8」の生産終了でロータリーエンジンは生産終了となっていました。
ところが、マツダはロータリーエンジンを見捨てたわけではなかった。EVの発電機関「レンジエクステンダー」として、復活させようとしているんですね。
10月2日の「技術説明会」で、マツダは、バッテリーで駆動するピュアEVと、ロータリーエンジンを発電機に使う「レンジエクステンダーモデル」を2020年までに発売すると発表しました。
「レンジエクステンダーモデル」は、バッテリーのみで走行するモデルに比べて、2倍の走行距離を実現します。バッテリーが一定レベルを下回ると、ロータリーエンジンで発電し、航続距離を延ばす仕組みです。
「レンジエクステンダー付きEVは、走行距離に対する不安や充電インフラを探す手間を解決する技術と考えています」とは、副社長の藤原清志氏のコメントです。
※藤原清志副社長(右)
ロータリーエンジンの特徴も生かされています。小型軽量なため、エンジンルーム内でのスペース効率が高く、静粛性と振動の少なさは、走行音が静かなEVで生きてきます。
マツダの「EV」は、つくり方にも独自性があります。
マツダの次世代技術の導入は、「マルチソリューション」に基づいています。国や地域のエネルギー政策や発電構成に応じたパワーユニットを適材適所に展開するという考え方です。
しかし、地域ごとのマルチな対応にはお金も時間もかかります。そこで、マツダは、ロータリーエンジンのコンパクトかつ出力の高さを活用して、共通のパッケージングでも電動化技術のマルチソリューション化を可能とする「マルチ‐xEV」化を進める計画なんですね。
ロータリーレンジエクステンダーユニットをベースにし、ジェネレーターやバッテリー、燃料タンクの組み合わせを変えることで、プラグインハイブリッド、シリーズハイブリッドなどを共通の車両パッケージで提供していきます。
これによって、国や地域の異なるニーズに対して、フレキシブルな対応が可能になるんですね。
「マツダの規模で国や地域の事情に対応するためには、マルチソリューションが必要になります」と、マツダ社長の丸本明氏は、記者会見の席上、述べました。
また、マツダは「技術説明会」で「EV」の投入を明らかにしたものの、その比率はわずか5%で、95%はガソリンエンジンなど内燃機関の技術を生かす戦略を強調しました。つまり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンの開発を継続する考えは変えません。
世界の自動車大手がEVの開発に集中し、ディーゼルエンジン車の縮小や撤退方針を相次いで打ち出すなかにあっても、マツダの戦略はぶれません。内燃機関を磨き上げることでCO2排出量の削減を目ざす方針です。
経営資源が限られたマツダの、まさしく独自戦略そのものです。マツダならではの強みといえるでしょう。