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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

日産・内田新社長、問われる〝夜の荒波〟を乗り切る覚悟

日産自動車の社長兼最高経営責任者(CEO)に1日付けで就任した内田誠氏は2日、横浜市内の本社で就任後初めての記者会見を開き、「日産は非常に厳しい環境にある。私は社長として覚悟を決めた」と述べました。

※内田誠氏

内田氏は2013年、日商岩井(現・双日)から日産に中途入社しました。転身の理由について、「アライアンス(提携)により、グローバルに飛躍する姿に魅了された」と、内田氏は記者会見の席上、語りました。以後、アライアンス購買などに携わり、直近では日産の中国事業を統括してきました。

振り返ってみれば、ルノー日産は2014年以降、共同購買、部品の共用化、工場の共同運営などに取り組み、シナジーの創出を目指してきました。2016年には三菱自動車が加わり、3社のシナジー効果で厳しさを増す自動車戦争を勝ち抜く戦略でした。

アライアンスの目標は、ルノー、日産、三菱自動車の3つの会社が独立を保ったまま、シナジー効果の最大化を図るとともに、それぞれの会社が成長と業績向上を加速することです。

3社アライアンスは、年間販売台数1400万台以上、売上高合計2400億ドル、年間シナジー100億ユーロの目標を掲げていました。

ところが、カルロス・ゴーン氏の逮捕後、状況は大きく変わりました。経営の主導権をめぐって、日産とルノーの間はぎくしゃくする場面が多くなり、アライアンスにきしみが生じているのではないかという声が聞かれるようになったんですね。

実際、ゴーン氏の逮捕後の一年、3社連合は、アライアンスの具体策をほとんど示していません。「CASE」に象徴される厳しい自動車戦争の最中、「失われた1年」は致命傷になります。

「ここ数年を振り返ったときに、アライアンスがあたかも進んでいないように見受けられていますが、これをきちんとリワインド(巻き戻し)して、重要なプロジェクトを進めていきます」と、内田氏は記者会見の席上、述べました。

11月28日、ルノー本社で開かれた3社連合の幹部会議で、次世代車の先端技術を共同開発する新会社を設立する方向で協議に入ったと伝えられたのは、その第一歩といえますが、果たして、今後、アライアンスはうまくいくのか。

というのも、ルノーとの資本見直し問題など、問題が山積しているからなんですね。その点について、内田氏は「現状ではまったく話をしていない」と述べました。

アライアンスは、再び、強さを取り戻せるのか。かりにも、きしみが生じているとするならば、修復は可能なのか。

それとも、ゴーン氏の強力なトップダウンがあったからこそアライアンスが成り立ったとするなら、もはやアライアンスに期待することはできないのか。

「アライアンスは重要な競争力です。部品の共用化や人材活用など、さまざまな成果を生み出してきました」と、内田氏は、3社連合の重要性を強調しました。

内田氏は、ルノーとの安定した関係づくりなど、課題山積の中で、新体制をスタートさせたことになります。

厳しい見方をすれば、いまの日産は、想像を絶する嵐に向かって出航する船のようでもあります。船長に吹きすさぶ夜の荒波を乗り切る〝覚悟〟があるかどうかが問われますね。

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