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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

日本でビジネスジェットは羽ばたくか

私は昔、ロンドンからニューヨークへ
超音速旅客機「コンコルド」で飛んだことがあります。確か4時間でした。
ニューヨークにつくと、
赤じゅうたんが敷かれた特別の専門スペースで
「ビジネス?」「イエス」「OK」と、
アッという間、そう、ものの1分もしないで、
入管手続きが終わったのを記憶しています。
日本でも、どうやら同じように専用スペースを設けられるようですね。

今朝の日経新聞によると、
国土交通省は、羽田空港にビジネスジェット搭乗客専用の
保安検査・出入国手続きの専用スペースを設け、
出入国にかかる時間を現在の最大30分程度から
約3分へと、大幅な短縮化を図るという。

ビジネスジェットの主な搭乗客は、
企業のトップなど、一分一秒が惜しい人たちです。
空港の車寄せから、搭乗機に直行する。
搭乗機を下りたら、すぐに目的地に向かう。
彼らの決断の一瞬の遅れが、
企業の命運を左右するケースもあるわけですから、
できるだけスピーディに動くことができる仕組みをつくるのは、
当然といえば当然ですわね。

しかし、なぜ、いま、日本の空港は、
ビジネスジェットの搭乗客のニーズに合った対応に
力を入れる必要があるのでしょうか。
その背景としては、ビジネスジェットが、いまや
グローバルビジネスにとって欠かせないツールとしての
地位を確立したことがあげられます。

自らのスケジュールに合わせて出発到着時間を設定する。
定期便のない場所にひとっとびで移動する。
プライバシーがしっかりと確保された空間のなかで、
移動時間をビジネスに利用する……
グローバル企業のトップにとって、
ビジネスジェットのメリットはきわめて大きい。
こうしたことから、ビジネスジェットは贅沢品でもなんでもなく、
当たり前のツールとして定着している。
現に、米国におけるビジネスジェットの保有台数は、
約2万機に上るといわれています。

一方、日本は、明らかに“ビジネスジェット後進国”です。
日本の空港は、定期便を利用する一般旅客への対応に主眼が置いてきたことから、
ビジネスジェットの搭乗客にとって利便性の高い環境づくりが
行われてきませんでした。

近年になって、少しばかり改善がみられるものの、
ビジネスジェット専用施設や専用動線は、整備されてこなかった。
実際、ビジネスジェット機の保有機体数は、50機強に過ぎません。

その結果、さまざまな不都合が生じています。
例えば、国土交通省の調査によれば、
ビジネスジェットの利用環境が整備されていないことから、
ある海外大手企業が日本で開催を予定していた会議を香港など、
他国で実施したケースが発生しているのです。
また、海外ビジネス航空事業者の約6割が、
日本発着を回避せざるを得なかった経験があるといっています。

海外には、ビジネスジェット専用空港があります。
ニューヨークを例に取ると、
J.F.ケネディ空港やニューアーク・リバティ空港などとは別に、
テターボロ空港やウエストチェスター空港などの
ビジネスジェット専用空港が整備されています。
また、ロンドンのファンボロー空港やパリのルブルジェ空港も
ビジネスジェット専用空港として知られていますね。

じつは、ホンダは、“ホンダジェット”を日本で販売しません。
その理由は、日本にはビジネスジェット機の環境が整備されていないからです。
専用施設がないうえ、駐機料も海外に比べて高いからです。
つまり、需要が見込めないというのが理由です。
ちなみに、“ホンダジェット”は生産もすべて米国で進められています。

国際的な都市間競争が激しくなっているのに加えて、
2020東京オリンピック・パラリンピックを6年後に控える今日、
ビジネスジェット機の受け入れ体制についても
熟考する必要があるでしょうね。

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