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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

VAIOがソニーを見返す日?

VAIOがついに黒字化しました。
14年7月、ソニーから日本産業パートナーズに売却されたパソコン事業が独立したVAIO株式会社は、14年度は19億円の営業赤字でしたが、15年度、2年目にして黒字化を達成しました。

26日、VAIOは、今年度の経営方針説明会および新製品発表会を開催しました。席上、VAIO社長の大田義実さんは次のように話しました。
「2015年度は、2014年度の2倍以上の大幅な売り上げ増加を達成しました。それから、営業利益の黒字化に成功しました。2014年度は約20億円の営業利益の赤字でしたから、V字回復を達成することができました」
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※VAIO株式会社社長の大田さん

ソニーが不採算事業として見切りをつけたはずのVAIOは、なぜ黒字化できたのか。
一つ指摘できるのは、昨年6月に社長に就任した大田さんの経営手腕でしょうね。
総合商社「双日」で常務を務め、2010年に情報通信機器商社のサンテレホン社長、14年に化学製品などの卸売業のミヤコ化学社長として再建を手掛け、VAIO社長に招聘されました。

VAIOでは営業部、技術営業部を新設して営業体制を強化。ソニーマーケティング頼みの脱却を図りました。技術営業部では、エンジニアが営業に同行し、顧客の声を聞いて商品企画に反映させたり、営業担当者に足りない商品知識をカバーするようにしたといいます。

黒字化の具体的な要因としては、本業のPC事業が伸びたこと、VAIOブランドによる電子機器の製造受託(EMS)事業が成長したこと、そして、社員の意識改革をあげることができますね。

例えば、ユニットごとに、ユニット長に責任を持たせた。モデルごとに事業計画を出させ、損益計算書を作成して営業利益まで管理させる。進行状況はその都度チェックし、毎日、前日までの各機種のPCの販売台数と売り上げを、機種別・ルート別に全社員に報告させるという徹底ぶりなんですね。

もっとも、ソニーからバッサリ切り離された時点で、社員の危機意識は一気に高まっていたことは間違いありません。まあ、2年で黒字化というスピードの源泉と考えることもできます。相当悔しい思いをしたはずですからね。

VAIOは現在、社員数約240人です。ここまでしぼったんですよね。小所帯だからこそ、大企業ではできなかった徹底したコスト対策や、リスクをとった経営判断を行っているんですね。

VAIOの本社は長野県安曇野市です。PCのラッグシップモデル「VAIO Z」は、設計から製造まで、すべてを安曇野工場で行っています。
販売台数は、ピークだった2010年の約870万台に対して昨年は約19万台です。市場で売れ筋の廉価モデルは扱わず、高付加価値商品に特化しているのです。主力機種をしぼり込んでいるわけですね。

PC事業以外にも、昨年始めたブラジルでのライセンス事業が順調で、今後、アルゼンチン、チリ、ウルグアイに拡大するといいます。現地メーカーが「VAIO」ブランドのパソコンを製造・販売するのです。

ただし、安心するわけにはいきません。課題は山積していますから。
とくに難しいのは、今後の成長戦略でしょう。成熟市場のPC事業において、規模を追わない戦略で、いかに成長するのか。
VAIOは、17年度には、PC事業と新規事業の割合を1対1にするとしています。EMS事業を軌道に乗せることに加え、「AIBO」で培った技術を生かしてロボットの受託生産なども行っています。それにしても、第三のコア事業に育てるのは簡単ではないでしょう。

いまのVAIOには勢いがあります。近い将来、VAIOブランドが世界で評価される「VAIOがソニーを見返す日」が、ひょっとして、ひょっとして、やってくるかもしれませんね。

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