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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ホンダHV用モーター増産のワケ

ホンダは、HV(ハイブリッド車)用のモーターの生産体制を強化します。
従来、浜松トランスミッション製造部は1本だった生産ラインを7月に2本に拡大、さらに10月に1本追加して計3本にするほか、鈴鹿製作所は、昨日、新ラインを稼働させて計2本になりました。

指摘するまでもなく、モーターは、HV、PHV(プラグインハイブリッド車)、EV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)など電動車に不可欠な部品です。きわめて高い技術力が集積されています。

モーターを外部から調達する自動車メーカーもあるなかで、ホンダは、モーターの内製にこだわっています。
鈴鹿と浜松で、全世界のホンダHV車用モーターを生産しているんですね。
鈴鹿においては「フィット」など小型のHV用、浜松においては「オデッセイ」や「アコード」など大型HV用のモーターを生産しています。
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※浜松トランスミッション製造部のHV用モーター生産ライン

モーターの生産ラインは、すべて自動化されており、工場内に作業員の姿はまばらです。
ロボットによる組み立て工程は、ほぼすべてが透明なカバーで覆われていて、気圧をコントロールするなどしてゴミが入らないようになっています。当然ながら、エンジンの生産ラインとは、趣が違いますよね。

では、いったい、なぜいま、ホンダはHV用モーターを増産するのでしょうか。

ホンダは、2030年をめどに世界で販売するホンダ車の3分の2を、HV、PHV、EV、FCVなどの環境対応車にすることを目指しています。
以前、社長の八郷隆弘さんは、「HVとPHVで全体の50%くらいのイメージ」と話していましたが、かりにHVとPHVを半数ずつとすれば25%がHVです。
15年度のホンダの世界販売台数におけるHV比率は約5%ですから、今後、長期的な目線で電動車率を上げていこうとすれば、HV用のモーターの生産能力は、どう考えても足りませんよね。

現状、ホンダは、HV用モーターは、すべて国内で生産しています。

本田技研工業取締役専務執行役員生産本部長の山根庸史さんは、昨日の取材会の席上、「日本でしっかりつくる技術を確立する」と話しました。
海外生産については「いずれは必要になってくると思っているけれども、いつどのようにかは、マーケットを見ながらやる」とコメントしました。
浜松はホンダ創業の地ですが、現在、浜松トランスミッション製造部は、トランスミッションのグローバルマザー工場です。いずれ海外で生産するためにも、長い目で、高効率な量産技術を確立する必要があるのは間違いありません。

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※鈴鹿製作所の重希土類フリーのHV用モーター生産ライン

今回、鈴鹿に新しく設置されたラインは、以前も書いたように、ホンダが大同特殊鋼と共同開発した「重希土類」フリーのHV用モーターを生産します。秋に発売予定の新型「フリード」に、世界初搭載されるんですね。
重希土類フリーもまた、いますぐに大きな効果を得られる技術ではありませんが、今後、ホンダに限らず電動車が増えれば、当然、重希土類の需要も増えます。そのとき、重希土類フリーという選択肢があることは、重要なリスクヘッジといえます。

よくいわれるように、次世代環境車の本命は、EVなのか、PHVなのか、FCVなのか、まだはっきりとは見えてきません。ただし、いずれにせよ、いま以上にモーターの技術がモノをいう時代になるのは間違いないんですね。
もとが“エンジン屋”のホンダにとって、モーターが、重要でないわけがありません。その技術で出遅れるわけにはいかないということでしょうね。

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