ホンダとヤマハ発動機は、昨日、日本国内の排気量50cc以下の原付スクーターや電動二輪車などのいわゆる「原付一種」における協業に向け、業務提携の検討を開始したと発表しました。
※ホンダの青木真二さん(左)と、ヤマハの渡部克明さん(右)
2018年をメドに、ヤマハは、ホンダから原付一種のOEM供給を受けます。すなわち、ヤマハで販売する原付一種を、ホンダが熊本製作所で生産するわけですよね。
「OEMですが、デザインはヤマハ独自で開発する。いまの商品の魂はそのまま乗せた形で、機種が存続していくと思っていただいていい。シャーシとエンジンはホンダさんのを共通で使うと理解していただきたい。販売にも影響はない」
ヤマハ発動機取締役常務執行役員MC事業本部長の渡部克明さんは、OEM供給を受ける「JOG」「Vino」について、記者の質問に答えてそう話しました。
ホンダとヤマハといえば、80年代のHY戦争を争ったライバルです。40年近く前の話ですが、当時の国内二輪市場は全盛期で年間300万台以上が販売されていました。いまや、市場規模は当時の8分の1。今年度は40万台を切ると予想されています。今年2月、ヤマハがホンダに話を持ち掛けたといいますが、両社の提携は、現在の国内二輪市場の厳しさを如実に語っているといえます。
二輪市場低迷の理由は複数あります。高校生に免許をとらせない、買わせない、運転させないの「3ない運動」、都市部での駐輪場不足、軽自動車人気や電動アシスト自転車の普及も、二輪市場の縮小につながったといわれますね。
一方、二輪車は技術的な課題にも直面しています。すなわち、環境規制への対応、電動化、安全性強化などです。難題が多いわりに、国内市場の成長は期待できない。新興国を中心に二輪市場は成長していますが、排気量50cc以下の「原付一種」の規格は、日本の独自規格で、海外展開は難しいんですね。
グローバル展開でき、採算性のいい大型二輪の開発にリソースを配分するために、二輪メーカーは、「選択と集中」を求められているわけです。
世界市場を見れば、ホンダは世界で年間約1700万台の二輪を販売していますから、約20万台の国内市場など、小さものといえばいえますよね。にもかかわらず、採算性も低く海外展開も難しい縮小市場の原付一種をつくり続けるのは、なぜか。
地方都市の移動手段として原付に乗っている高齢者や学生がいますから、おいそれとやめるわけにはいかないと見ることもできます。
昨日の発表会の席上、ホンダ取締役執行役員二輪事業本部長の青木真二さんは、こうコメントしました。
「地域内での近距離移動手段を必要としているお客さまがいる。そうしたお客さまに、よりよい商品を提供するという社会的責任を、私たちは果たすべき」
「社会的責任」という言葉が印象的でしたね。
いま、四輪の世界では、環境性能はもとより、自動運転や安全性能の進化、さらにシェアリングエコノミーなど変化の嵐が起きています。この嵐のなかで、四輪の進化、発展は目覚ましいものがあります。
一方、同じモビリティである二輪は、ある面では四輪と競合していかなければならない。例えば手軽なカーシェアや自動運転が普及すれば、地方の原付の需要に影響するのは間違いありませんからね。
新たな二輪の魅力を発信できなければ、市場縮小に歯止めはかかりません。
時代の変化のなかで、二輪メーカーは、生き残りをかけて、自らの在り方、存在意義を根本から見直すべきときにきていますね。