東芝にまた、難題が発生しました。東芝は、経営危機のきっかけとなったウエスチングハウス(WH)の米連邦破産法11条(チャプターイレブン)の適用申請を検討していますが、なかなか簡単ではないようなんですね。
訪米中の世耕弘成経済産業省は16日、米トランプ政権の経済閣僚と初会談しました。米国側からWHの話題を切り出された世耕氏は、WHによる原発建設コストの超過問題を機に、東芝が半導体事業を分社することを決めた経緯などを説明しました。
商務省のロス長官とエネルギー省のペリー長官は、東芝の原発子会社のウエスチングハウスが、米国で原子力発電所を建設していることに触れ、「東芝の財政的安定性は米国にとっても非常に重要だ」と述べました。
会談では、WHが裁判所への適用申請を検討している米連邦破産法11条(チャプターイレブン)についての直接的な言及はありませんでしたが、東芝が思惑通り、WHに米連邦破産法11条の適用申請を行うことができるのか、どうやら、むずかしくなってきたようです。
問題となっているのは、米南部のジョージア州で建設中のボーグル原発3、4号機です。
振り返ってみれば、米国では、1979年のスリーマイル原発事故以来、新規の原発建設が凍結されてきましたが、ジョージ・W・ブッシュ政権は、温室効果ガスを排出しない原発の利用拡大を提言し、テネシー州のワッツバー原発2号機、ジョージア州のボーグル原発3、4号機、サウスカロライナ州サマー原発2、3号機というように、原発の新設を進めてきました。
スリーマイル原発事故以来、初の原発となったワッツバー原発2号機は、すでに運転を開始していますが、ボーグル原発3、4号機は、まだ3割しか建設が進んでおらず、計画の2020年の完工はむずかしいのではないかといわれているんですね。
米政府は事業を計画した地元電力会社に対して、約83億ドル(約9500億円)の融資枠を設けて建設を支援しています。原子炉などの工事を請け負うWHは、電力会社が保証枠を使って調達した資金を受け取って、プロジェクトを進めています。
かりにも、破綻法が申請され、原発の建設が遅れれば、電力会社は借り入れた建設資金の返済が滞りかねません。保証をつけた米政府がその一部を肩代わりすることになれば、米国国民の負担が発生することになります。
つまり、WHの処理が米政府の負担問題に発展すれば、一企業の問題ではなく、国家の問題になるわけです。
加えて、米国内の原発プロジェクトでは7000人以上が働いています。法的整理に入って工事が停滞するようなことになれば、雇用にも少なからぬ影響がおよびます。保護主義的政策を掲げるトランプ政権にとっては、避けたい事態です。
米政権がWHの破綻に難色を示したとなれば、今後の東芝再建の行方には少なからぬ影響が出てきます。
東芝の受難は当分、続くと見ていいでしょう。
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