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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

好調ホンダに余裕はあるか!?

先日、羽田空港を訪れると、 出発ロビーに真っ黒なクルマが展示されていました。重厚で洗練されたデザインは、遠目にも存在感があります。思わず近づいて確かめると、ホンダの新型「シビック」のハッチバックでした。

「シビック」は、セダンタイプが16年に北米カーオブザイヤーを獲得しました。しかし、国内ではまだ発売されていません。いよいよ今夏、登場するんですね。

さて、そのホンダが、好調です。円高の中、2017年3月期は連結営業利益が8407億円と前期比67%増です。四輪の世界販売台数は、初めて500万台を突破。例の「シビック」などが好調で、北米や中国が伸びました。


※決算発表をするホンダ副社長の倉石誠司さん

クルマが売れていることに加えて、大きいのは為替影響を減らしたことです。

もともとホンダは、「需要のあるところでつくる」といい続けてきました。いまや、海外生産比率は84%、10年前より20%以上高まっているといいます。1ドルあたり1円の為替変動で、営業利益の変動は120億円と、こちらは10年前の3分の2の水準です。為替変動に、簡単には負けない仕組みができあがっている。まさに、グローバル企業になったといえるでしょうね。

もっとも、今期の営業利益は7050億円と、前期比16%以上のマイナス予想です。しかし、内容はそう悪くはない。為替のマイナス影響950億円、年金会計処理のマイナス影響840億円をのぞくと、433億円の増益という計算になります。

足元の国内市場も悪くありません。「シビック」に加えて「N‐BOX」が期待されます。2011年発売の「N‐BOX」は、昨年度の売り上げ台数がトヨタ「プリウス」に次ぐ2位。発売から5年が経っても、昨年12月以降4か月連続首位獲得など、驚異的な人気です。今夏、5年半ぶりのフルモデルチェンジを予定しており、人気は当面続くでしょうね。

登録車では、ホンダは16年度の国内販売で日産に抜かれ、3位に落ちました。とはいえ、軽もふくめた台数では引き続きトヨタに次ぐ2位を維持しています。

ただし、ちょっと業績がいいくらいで気は抜けません。「ホンダジェット」や、航空機エンジン、スーパースポーツカー「NSX」、F1、ロボット開発など、ブランド力を牽引する夢のある挑戦を続けていくためには、 経営に“余裕”が求められますからね。

それより何より、自動車業界はいま、コネクティッド、自動運転、車両電動化、カーシェアなど、さまざまな変化の嵐のなかにあります。ホンダは今年に入って、新しい研究開発組織「R&DセンターX」を設置しましたが、変化が激しい時代だからこそ、必ずしもすぐに収益に結びつかないけれど、いつか大きく収益に貢献する技術の開発を、長い目で続けていくことも必要です。

今期、研究開発費は7500億円と、前期比540億円増加しています。他社との提携や新組織の設置など、新しい試みを次々と行っていますからね。本業でしっかり稼ぎ、次の収益源の芽を育てられるか。すなわち、研究開発費の負担を、確実に将来の利益につなげられるかどうかが問われているのは間違いありません。

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