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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

マツダの新型「アテンザ」があえて“逆張り”を貫く理由

なぜ、いまセダンなのか。そこには、マツダの車づくりに対する強い思いがある。


※大幅改良されたマツダ新型「アテンザ」

マツダは24日、主力車種「アテンザ」を大幅改良し、セダンとワゴンの2タイプを発売すると発表しました。

国内のセダンとステーションワゴン市場が、SUV人気に押されて縮小するなか、マツダがトレンドに逆らってまで、セダンに力を入れるのは、なぜなのか。

そこには、基本車型であるセダンを丹念につくりこみ、質感を高め、商品価値を向上していくことが、商品ラインナップに好影響を与えるという考え方があります。

「私はまず、セダンを大切にしています。アテンザなどで最高のパフォーマンスを実現し、そのうえでSUVなどの車種にその技術を展開し、走る歓びが感じられるものにしていきたい。その意味で、セダンは極めて重要なモデルになります」と、5月24日に開かれた新型「アテンザ」のお披露目会の会場で、社長の小飼雅道氏は語りました。

また、経営的な意味でも、「アテンザ」は重要な位置づけになります。

小飼氏は、次のように述べました。
「製造しているのは、山口県の防府工場と中国の南京市、ロシアのウラジオストクなどで、昨年度は年間15万台以上を販売しました。グローバルの販売台数の1割近くを占めています。トータル120か国に供給し、新興国、先進国のセダンの需要にお応えすることにより、経営的にも非常に重要なモデルと位置づけています」

だからこそ、「アテンザ」をマツダのフラッグシップモデルとして、しっかり認識してもらう必要があります。マツダは今回の「アテンザ」の大幅改良で、セダン好きの大人に支持されることを強く意識し、セダンやステーションワゴンでしかもちえない本質を追求しました。

例えば、フロントグリルやヘッドランプ周りを大幅に変更し、立体感や骨格の強さ、重心の低さや広がり感を強調しています。内装は、シートデザインを一新し、上位モデルは通気性を高める工夫や高級素材を使用しています。また、遮音と吸音によって静粛性を大幅に向上させています。

※写真左からマツダ新型「アテンザ」の玉谷チーフデザイナー、小飼雅道社長、脇家(わきいえ)開発主査

もう一つの“逆張り”は、内燃機関を磨き続けていることです。

ご存じのように、フォルクスワーゲンのディーゼルエンジンの燃費不正問題以来、ディーゼルエンジンには、いま、逆風が吹き荒れています。

むろん、怠りなく、EV(電気自動車)もトヨタなどと共同開発をしていますが、「ガソリンエンジンとクリーンディーゼルエンジンは、我々の強みだと思っています。それをゆるめることはない」と、小飼氏はきっぱりいい切りました。

新型「アテンザ」のパワートレーンには、従来通り、「スカイアクティブ‐G2.0」「スカイアクティブ‐G2.5」のガソリン2車種に加えて、「スカイアクティブ‐D2.2」のディーゼル1車種の計3車種がラインナップされています。

ガソリンエンジン、クリーンディーゼルエンジンともに、改良され、新技術を採用して、進化させています。

セダンといい、ディーゼルエンジンといい、新型「アテンザ」は、トレンドに真っ向から逆らった車といえます。

時代の流れに逆らい、人が選ばない道を選ぶことは、たいへん勇気がいります。下手をすれば、大失敗の可能性がないとは限りませんからね。

では、なぜ、トレンドに逆らうのか。なぜ、“逆張り”をするのか。

「マツダの強みというものを、うまく組み合わせていくことが、我々の独自性である」と、小飼氏は語りました。

加えて、マツダには長年、内燃技術を磨いてきた自信があります。

今後、車の数は新興国を中心に増え続け、その大多数は内燃機関になると、マツダは考えています。そして、まだまだ内燃機関には改善の余地があるとしています。

また、走行時のCO2排出だけを問題にするのではなく、“ウェル・ツー・ホイール(油田から車輪まで)”の考え方で、エネルギー源がつくられ、車の動力として使われるまでの、すべての過程におけるCO2排出量の削減方法を考えるべきだという立場に、マツダは立っています。

それにしても、セダンからSUV、そして内燃機関から電動化への流れは予想以上ですが、マツダは、あえてその流れにあらがう道を突き進んでいます。

新型「アテンザ」は、逆風が吹こうとも、自らの信念を貫き通すマツダの強い意思がこめられた車といえます。

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