マツダ専務執行役員の藤原清志氏は6日、報道関係者との意見交換会で「内燃機関は、将来も大多数を占めることに変わりない」と述べ、ディーゼルをやめない方針であることをあらためて示しました。
ご存じの通り、15年に発覚した独フォルクスワーゲンの排ガス不正問題によって、ディーゼルエンジンを取り巻く環境は一変しました。
英国やフランス、中国の当局が、販売規制を検討していることを受けて、大手自動車メーカーは、相次いでディーゼルの開発を見送っています。
その一方、中国は国策として、電気自動車(EV)の開発を加速させており、世界の大手自動車メーカーは、一気に、EVなどへの集中を進めているんですね。
世界的なEVブームは本物なのか。本当にEVが主流になる時代がやってくるのか。
いやいや、そんなに単純な話ではないようなんですね。
実際、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを支持するユーザーが少なくないことからもわかるように、高い燃費性能、応答性のよい出力特性などの魅力は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンならではです。
17年8月、マツダがトヨタ、デンソーと「EV C.A. Spirit」を立ち上げ、EVの基盤技術を共同開発すると発表したことから、マツダもいよいよEVにシフトするのかという憶測も飛び交いましたが、まったくそうではなかった。
「エンジンにはまだまだ改善の余地がある」として、マツダは、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン技術をともに進化させようとしているんですね。
なぜ、マツダはエンジンにこだわるのか。二つの理由があります。
一つは、今後、新興国を中心に車の保有台数が増加するなか、大多数は内燃機関を使用した車だという予測があるからです。であるならば、温室効果ガスの削減には、将来的にも大多数を占める内燃機関のCO2削減がもっとも需要だと、マツダは考えています。
もう一つ、マツダは「ウェル・トウ・ホイール(原料採掘から使用まで)」の考え方のもとに、CO2削減を進めることが重要だとします。
この考え方でいくと、EVは走行時にはCO2を排出しないものの、火力発電の場合は発電時にCO2を排出しているということになる。これでは、実質的なCO2削減にはならないわけですね。
マツダは19年に、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの“いいところ取り”をした、次世代ガソリンエンジン「スカイアクティブ‐X」を搭載した車を市場投入する計画です。
ただし、内燃機関にこだわるマツダにしてみても、電動化の流れにはさからうことはできません。この点については、内燃機関をさらに磨きつづけて、順次、電動化技術と組み合わせながら、マルチソリューションの考え方で温室効果ガス削減効果を最大化していく計画です。
マツダの年間販売台数は、160万台です。トヨタやフォルクスワーゲンに比べたら、小さな小さな自動車メーカーです。
小さな会社が大手自動車メーカーと同じことをしたら、たちまち競争に敗けます。だからこそ、マツダはあえてEV化の流れにあらがい、内燃機関にこだわる。
しかも、マツダはエンジンに強みがあります。「まだまだ改善の余地がある」という藤原氏の言葉は、マツダがこれからもエンジンの技術を進化させ、エンジンを強みにしていくことの覚悟のあらわれといっていいでしょう。
小さなマツダが「世界一」になる道は、ブームに踊ることなく、自らの強みを磨きつづけることにあります。