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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

パナソニックの「モノづくり革新センター」の意義

先日、栃木県宇都宮市にあるパナソニックの「モノづくり革新センター」がメディア公開されました。パナソニックのテレビのマザー工場です。5月から、今月発売の有機ELテレビ「ビエラTH-65EZ1000」の生産をスタートしたんですね。

「モノづくり革新センター」は、宇都宮工場として1967年に創設されて以来、半世紀にわたって、B2C、B2B用のテレビ、さらにテクニクスオーディオの生産を行っています。ブラウン管、プラズマ、液晶、いずれも生産した経験をもつ。つまり、テレビ生産にかけては、膨大な技術の蓄積があるわけです。

パナソニックアプライアンス社テレビ事業部モノづくり革新センター所長の阪東弘三さんは、次のようにコメントしました。
「『モノづくり革新センター』は、日本のモノづくりを象徴する工場です。技術の蓄積と人づくりを重視し、技術の継承に重きをおき、海外のテレビ生産工場に展開している。新しい技術と蓄積した技術を融合させ、高品質、高機能な商品の生産を可能にしています」


※モノづくり革新センター所長の阪東弘三さん

人づくりや技術継承の場として、「モノづくり革新センター」内には、「モノづくり道場」が設けられています。座学に加え、ビス打ちや、ディスプレイ上の小さな点など不良を素早く見抜く検査の技術などを磨く。ここで好成績を修め、高いスキルを身につけた「匠」と呼ばれる技術者だけが、「EZ1000」の生産ラインにつくことができるといいます。


※有機 ELテレビ「EZ1000」の生産ライン

「EZ1000」の生産ライン上には、複数のロボットや機械が導入されていましたが、20人以上の「匠」たちが、丁寧に作業を行っていました。


※人と協調して作業するロボット

これらのロボットは、人と共存しながら働けるロボットだといいます。
工場の自動化やIoT化がいわれるなかで、テレビの生産ラインはどうなっていくのか。
「いま、今後の可能性を探っているところです。むやみやたらに自動化するのではなく、人と自動化のミックスによって、デザインも含め、日本でつくる製品は高い品位がある。そこにテレビとしての価値が残っていると考えています」
と、阪東さんは話しました。

パナソニックは、海外に7つのテレビ工場をもちます。「モノづくり革新センター」には、海外工場から研修や実習を受けにメンバーが来日し、技術、検査、生産管理、品質管理、製造ラインの計画やラインの組み立て、立ち上げなどを学ぶといいます。

近年、製造業におけるマザー工場の役割は、問われ続けています。国内市場の縮小、海外市場の拡大、円高などの影響下、国内製造業は次々と海外に工場をつくってきました。「マザー工場」とは、本来、これらの海外工場に対して、生産方法や人材育成、課題解決などの技術支援を行います。

しかし、多くの海外拠点の技術支援を、国内の一拠点がすべて行うのは簡単なことではありません。海外拠点それぞれが、独自に技術力を磨き、人材育成や生産管理も担えるようにならなければ、グローバル市場における競争力を維持できない。

一方で、海外の“子工場”が、マザー工場以上の力をもつのなら、マザー工場の役割は失われてしまいます。ジレンマですよね。

例えば、パナソニックの有機ELテレビの場合、欧州では、15年10月から有機ELテレビ「TX-65CZ950」を発売しているほか、「EZ1000」も、日本と並行してすでに生産を開始。マレーシアの工場でも、来月には生産開始します。こうした環境下で、「モノづくり革新センター」の存在意義を、いかに維持していくかが問われるわけです。

※モノづくり革新センター外観

阪東さんは、「ここから発信するのは『モノづくり』です」と強調しました。人とロボットの協調を探るのも、その一つでしょう。

日本の「モノづくり」の価値、マザー工場の意義は、これからも、つねに問われ続けていきますよね。

 

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