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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

トヨタはEVで巻き返せるか

急速に進むEVシフトに取り残されまいと、自動車メーカーがいっせいに走り出しています。トヨタは、追いつくことができるのでしょうか。


※トヨタ取締役副社長の永田理氏

すでに報じられているように、トヨタは9月28日、マツダ、デンソーと共同でEVの基幹技術の開発を行う新会社の設立を発表しました。

新会社の名前は、「EVシー・エー・スピリット」です。資本金は1000万円で、トヨタが90%、マツダとデンソーが5%ずつ出資します。

社長には、トヨタ副社長の寺師茂樹氏、取締役には伊勢清貴氏、水島寿之氏が就任しています。

新会社は、マツダの「一括企画」や「モデルベース開発」、デンソーの「エレクトロニクス技術」、トヨタの「TNGA」を持ち寄って、EV量産のカギとなる基幹技術などを開発する計画なんですね。

トヨタは97年に発売した世界初の量産HV「プリウス」の大成功がアダとなってEVの開発に出遅れました。HVを高く買い過ぎたあまり、EVに投資するタイミングを逃したんですね。“イノベーションのジレンマ”といっていいでしょう。

じつは、トヨタはEVをやらなかったわけではありません。トヨタ社長の豊田章男氏は、技術陣に「EVをやらなくていいのか」といったことがあります。ところが、技術陣から返ってきたのは、「EVなんていつでもできます」という答えでした。

豊田章男氏は、2010年5月、半ば社内の反対を押し切る形で、米国のEVベンチャー、テスラ・モーターズと業務・資本提携し、北米で「RAV4」の開発をスタートさせました。

ところが、テスラとのEV開発はうまくいかず、トヨタはテスラとの提携を解消しました。豊田章男氏の肝いりでスタートしたEV開発は、志半ばで頓挫した経緯があるんですね。

ここへきて、米カリフォルニアや中国の環境規制によって、EV開発が待ったなしの状況になっているのは、ご存じの通りです。

すでに、日産はEV「リーフ」の累計生産が50万台を突破しています。フォルクスワーゲンなどの欧米勢もEVにシフトしています。中国BYDなども中国の巨大なEV需要を取り込もうと低価格EVで攻勢をかけています。

トヨタは、予想以上の速さで進むEV化の流れに乗り遅れまいと、EVの新会社「EVシー・エー・スピリット」を設立したわけですが、果たして、先行する日産や欧米勢に追いつくことができるかどうかということなんですね。

現在、「EVシー・エー・スピリット」は、ダイハツ工業、スズキ、日野自動車、スバルなどの参加を呼び掛けているといわれます。

「『プリウス』以来、20年にわたって積み上げてきた技術の蓄積をEVの開発につなげていきたいと考えています。トヨタだけではEVの開発競争に勝つことはできません」

11月7日に開かれた「17年4~9月期」の決算説明会の席上、取締役副社長の永田理氏は語りました。

トヨタといえども、急速なEV化に自前主義で臨むことはできず、当然、“仲間づくり”が必要です。それはいいとして、問題は、スピードです。この期におよんで、“仲間づくり”でいいのかという声があります。

果たして、このペースで熾烈なEVの開発競争に割って入ることができるのか。もっとスピードをあげなければ、取り残されてしまうのではないか。

また、マツダ、デンソーをはじめ、ダイハツ工業、スズキ、スバルなど、仲間づくりの先にあるのは“寄り合い所帯”ですよね。この寄り合い所帯をどうまとめていくかという問題もあります。

寺師氏は、トヨタ本体の副社長ですから、「EVシー・エー・スピリット」の現場を実質的にまとめていくのは、先進技術開発カンパニーのプレジデントで、チーフ・セーフティー・テクノロジー・オフィサーを務める伊勢氏になるのではないでしょうかね。

また、アイシン精機から招へいされ、パワートレーンカンパニーのプレジデントを務める水島寿之氏の役割も大きいでしょう。

豊田章男氏は、一向にEVへの熱があがらない開発陣に対して、名古屋弁で「ちゃっちゃとやれ」といっています。「早くやれ」ということです。

“仲間づくり”に時間をとられているヒマがあったら、「ちゃっちゃとやれ」というのが、豊田章男氏の本音なのではないでしょうか。

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