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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

自工会会長の章男さんは、何を語ったか

日本自動車工業会の会長に就任したトヨタ自動車社長の豊田章男さんは、17日の会見に続いて、18日にも報道陣のインタビューに応じました。会社の話ではなく、業界の話だからでしょうか、トヨタの決算会見のときよりは、リラックスした雰囲気でしたね。


※自工会会長の豊田章男さん

質問は、自動車業界について、CASE(コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化)や税制、IT人材の確保、二輪の現状、東京モーターショーまで多岐に及びました。自動車業界の直面する課題は、多いですからね。

章男さんは、例えば、国内生産台数の1000万台規模の維持については、「1000万台規模があれば、何とか世界でコンペティティブな自動車産業が、日本発でこれからも闘っていける」と考え方を語りました。

自動車税制については、主要国のなかでは「世界でいちばん高い税金を払っている国だという認識は持っていただきたい」とし、自動車税の一部は地方財源に充てられることから、「車体課税の話をすると、クルマ対地方財源のような対立軸で論じられることは非常に残念」と語りました。「クルマユーザーも国民である。そのユーザーの負担は世界でいちばん高いという認識を、ぜひもっていただきたい」と、繰り返し強調しました。国内販売が振るわないなか、クルマの保有にかかるコストを抑えることは、わかりやすい対策の一つですよね。

また、地盤沈下が指摘されて久しい東京モーターショーについては、「中国の市場としての魅力が高まった結果、ワールドプレミアや海外メーカーのプレゼンの場所は、中国がメインになっているのが現実」と語りました。

そのうえで、「米国でも、デトロイトモーターショーより“CES”という動きが、自動車メーカーでもあります。自動車業界だけでやっていくことがいいのか。日本には電機系のインダストリーも頑張っているところがありますので、そういうところと連合し日本のモノづくりみたいな形で発信できるチャンスを、何とかいただきたいなと思っています」と、コメントしました。実現すればおもしろいですよね。

章男さんは、常日頃から日本の自動車産業全体のことを考えていればこその発言なんでしょうね。自工会の会長でなくとも、トヨタトップとして、いつも業界の未来を考えているのは間違いない。

章男さんは、また、「私は世間に認められているクルマ好きです」として、「生意気ないい方ですが、そのアイコンを十二分に活用させていただきたい」とも、語りました。「モリゾウというドライバーがラリーに参加することによって、それを見たいという人が、昨今増えてきています。非常に生意気に聞こえるかもしれませんが、事実としてそういう方にきていただいている」――。「生意気な」といい回しも、フランクな章男さんらしいですね。

章男さんの「生意気な」発言や態度などを、快く思わない人もいるでしょうが、章男さんは、そのあたりのことは先刻承知なんですね。

章男さんは、トヨタの社長業は来月で10年目に入ります。自工会会長職も、今回2度目です。この間、私は、企業のトップや大学の先生から、「章男さんになって、トヨタはよくなった」という話を耳にしました。就任当時に比べて、「章男さんはちゃらちゃらしていたが、いい意味で変わった」という話も聞きました。

断るまでもないことですが、トヨタは、世界で年間1000万台以上を販売し、ハイブリッド車、燃料電池車、プラグインハイブリッド車、電気自動車の総称としての「電動車」を、世界でいちばん販売している自動車メーカーです。その意味で、トヨタが、世界の自動車産業をリードする企業であるのは間違いない。そのトヨタのトップ、それも豊田家の御曹司の社長だからこそ、自工会トップとして、できることがあるはずです。

章男さんは、自工会会長としての2年間に、何をするのか。任期は、東京五輪の直前までです。五輪、さらにその先の日本の自動車業界の未来に、明るい道筋をつけることはできるでしょうか。

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